日曜劇場「日本沈没」が好スタートの理由 他のドラマとますます開く製作費格差

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脚本にキズを感じた箇所も…

 半面、初回には脚本のキズとしか思えない部分もあった。キズが続いてしまうと、視聴者が興ざめしかねない。

 天海は田所を「関東沈没に関する公聴会」に招いた。天海がまだ関東沈没を信じていないころ、田所を黙らせようと、だまし討ちをかけた。

「詐欺ビジネスに加担しているのでは」(天海)

「私を騙したんだな!」(田所)

 田所をスキャンダル漬けにして関東沈没説を唱えられないようにした。田所は憤怒した。

 それでも田所が関東沈没説を引っ込めなかったため、今度は田所を同行させ、海底を調べる。田所が主張する沈没の前兆のスロースリップ(断層がゆっくりすべる)はないこと確認しようとする。

「COMS付近の地層を調べて、スロースリップの進行などないことを証明して、(田所を)黙らせるんです」(天海)

 天海の真の目的は自分の目で海底調査することだったものの、いずれにせよ田所が同行しないと意味がない。田所は公聴会で天海に騙されたが、なぜか誘いに乗った。

 田所も海底がどうなっているか自分の目で確かめたかったのかもしれない。半面、その心象風景は描くべきだ。短い時間で処理できるのだから。

 田所という男は天才らしいが、初回は騙されても懲りない間の抜けた人物に映ってしまった。

 初回の終盤で天海は政府関係者と官僚たちに向かって宣言した。

「日本の未来はわれわれにかかっているんです」

 このドラマはある種、ヒーローものに近い。天海たちが捨て身で日本人を助けようとする姿が視聴者の胸を打つのだろう。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月17日掲載

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