手塚治虫の未亡人が「虫プロ」を提訴 経営危機で家賃を2年間滞納

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開店休業状態となった虫プロ

 ディズニーアニメに憧れていた手塚の手によって、虫プロが設立されたのは1962年のこと。翌年には日本初の連続テレビアニメ「鉄腕アトム」を作り、「ジャングル大帝」「リボンの騎士」「あしたのジョー」など、次々と名作を生み出したが、次第に経営は悪化。社長退任後、73年に倒産し、手塚が莫大な負債を肩代わりする。ここで中核スタッフは飛び出し、その4年後、残ったスタッフが再建したのが、現「虫プロ」というわけなのだ。

 かように縁ある会社を、なぜ未亡人は訴え出たのか。

「虫プロが会社として体をなさなくなり、家賃も払えなくなったからですよ」

 とは、訴訟を取材したジャーナリスト。

 同社は練馬区富士見台に本社を構えているが、この一帯はもともと400坪の手塚邸があった土地。倒産後、手塚は借金返済のために自宅を売り払ったが、この土地と社屋だけは残し、現虫プロに貸し出していたという。

「しかし、5年程前から支払いが遅れ始めた。賃料は月38万円ほどでしたが、滞納し、数カ月まとめて支払うということが続き、2年前からは一切、振り込みがなくなった。督促をしても無視されるか、“再生プランを出すから待ってほしい”と言われるばかり。一向に支払われる気配がないため、建物の明け渡しと未払い賃料の清算を求め、訴訟に打って出たというわけです」(同)

 虫プロ側にとっては厳しい訴訟となりそうだが、一体なぜ、伝統ある会社がこのような状態になったのか。

 さるアニメ業界関係者によれば、

「手塚先生は『手塚プロダクション』という会社も設立していて、先生のアニメの版権はほとんどそちらが持っているので、虫プロの利益にはならない。オリジナルを作らなくては稼げませんが、旧虫プロ時代からのスタッフも高齢化し、3年前には再建時からの社長も亡くなった。近年は新作もほとんど作っていませんでした」

 実質的には開店休業状態だったのだろう。

 当事者双方に取材を申し込んだが、いずれからも回答はなかった。

 前出・辻氏が言う。

「10年程前、テレビの取材で虫プロに行ったら、手塚先生が使っていた映画撮影用の特殊カメラがそのまま残っていてね。みんなで触ったり撫でたりして懐かしかったな。新旧では別会社とはいえ、あの虫プロがそんなことになっているとは、本当に残念ですよ」

 奇しくも今年は手塚の33回忌に当たる。

週刊新潮 2021年10月14日号掲載

ワイド特集「星屑のステージ」より

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