巨人1位「翁田大勢」はようやく復調…「ドラフト2021」意外な順位で指名された選手たち

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わずか1試合の登板

 一方、外れ1位に目を移すと、最速157キロ右腕の翁田大勢(関西国際大)を巨人が1位で指名したことは予想外だった。兵庫県内では高校時代から評判の右腕だったとはいえ、大学では故障もあって活躍を見せたのは2年秋のシーズンのみ。今年の春も調整が遅れ、わずか1試合の登板でワンアウトもとれずに降板している。

 今秋になって、ようやく復調。プロ12球団のスカウトが集結した10月4日の大阪体育大戦では14奪三振、2失点完投と結果を残すも、6四死球とコントロールや変化球に課題が残った。巨人は、常時150キロ前後をマークするストレートの勢いを高く評価したようだが、翁田を1位候補として考えていた球団は少なかった。即戦力というタイプではなく、まずは二軍でしっかりと、投球全体のレベルアップに取り組むことが必要になるだろう。

 続いて2位指名で、意外な高評価だった選手は2人。ロッテに指名された池田来翔(国士舘大)と、楽天に指名された安田悠馬(愛知大)だ。池田は東都二部を代表する強打のセカンドで、大学日本代表候補にも選ばれた経歴を持つ。ただ、4年間のリーグ戦通算本塁打は3本と多くない。守備や走塁もドラフト候補としては“及第点”というレベルで、2位指名は予想外だった。

 安田は、愛知大学リーグの二部所属。今年はオープン戦や公式戦を通して、特大弾を連発し、長打力が注目されていた捕手だが、これほど上位で指名されると予想していた球団は、楽天以外になかったのではないか。

新人王争いの中心となるか

 逆に指名順位が低く、評価が低いと感じた投手は、ロッテ3位の広畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ)と日本ハム8位の北山亘基(京都産業大)。広畑は社会人ナンバーワンの呼び声高い本格派右腕で、最速154キロのストレートだけでなく、変化球やコントロールも高いレベルにある。今年の候補の中では、最も即戦力として期待できる投手だけに、3位まで指名されずに残っていたことは本当に驚きだった。

 ドラフト前に行われた都市対抗予選で打ち込まれたことと、上背の無さが評価を下げた原因と考えられるが、上位指名で野手を優先したロッテにとって、広畑を指名できたことは、大きな幸運だった。く、広畑は新人王争いの中心となることも期待できる。

 北山は最速153キロを誇る本格派右腕。投手としての総合力も大学球界では屈指の存在だ。少し癖のあるフォームや今秋は好投しながら勝ち運に恵まれない点などが、指名順位が低くなった理由として挙げられる。だが、日本ハムにとっては、戦力として大きなプラスで、1年目から一軍の戦力となる可能性は高いだろう。

 冒頭で触れたように目玉候補が不在で、展開が非常に読みづらいと言われた今年のドラフトだったが、終わってみると、やはり各球団の思惑などによって、前評判とは異なり、指名順位が大きく変動することがはっきりとわかる結果となった。果たして、来年はどんな展開になるのだろうか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月14日掲載

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