文科省の“教科書改悪”に一石を投じた出版社が 学習指導要領に沿わない“小説収録”の教科書を販売

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「豊かさの象徴」

「第一学習社」はなぜお上の意向に反して「現代の国語」の教科書に小説を収録したのか。

 同社に取材を申し込むと文書で回答が寄せられた。

〈教育現場の先生方からご意見を伺うなかで、「現代の国語」の授業の中で小説を扱いたいとの要望が多く聞かれたことを踏まえました〉

〈文部科学省による事前の説明会などを踏まえ、小説を扱うことは難しいとの認識はございましたが、上記現場ニーズを踏まえ、不合格を覚悟でチャレンジするだけの価値があると判断しました〉

 教育現場の声を汲み取り、あえて“狙って”小説を入れたというのだ。そして、その狙いは見事に的中したといえそうだ。

 高校の国語教科書の編集に関わったことがある紅野謙介・日本大学文理学部教授によると、

「8月26日に東京の都立高校における各教科書の採択部数が発表されたのですが、『現代の国語』で最大となるシェアを取ったのがこの第一学習社の教科書でした。ある意味現場の実態を表すデータで、皆さん“小説なしではやってられない”と思っていたわけです」

 新学習指導要領に沿っていない教科書が一番売れる。奇妙な事態という他ないが、

「第一学習社以外の会社からすると、新学習指導要領に従って教科書を作ったら、そこから逸脱した教科書を文科省が認めてしまってシェアを奪われたということになる。そうした点も問題になるでしょうね。もちろん、そもそも文科省が定めた新学習指導要領に問題があったからこそ、こういう事態になっているのです」(同)

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