文科省の“教科書改悪”に一石を投じた出版社が 学習指導要領に沿わない“小説収録”の教科書を販売

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文科省が想定しなかった小説が収録された教科書

 しかし、“例外”はある。広島市にある「第一学習社」の「現代の国語」には、次の五つの小説が収録されているのだ。芥川龍之介の「羅生門」、夏目漱石の「夢十夜」、原田マハの「砂に埋もれたル・コルビュジエ」、村上春樹の「鏡」、志賀直哉の「城の崎にて」。これらの小説が収録されている箇所には「活動の手引き」など、授業での扱い方をガイドするメモのようなものが付いており、

「当初は、そこの書き方が従来の『文学作品を読み込む』ということと変わらない内容になっていました。そこで『現代の国語』の趣旨にふさわしい学習活動に中身を整えてもらいたいという意見を付したところ、学習活動について修正が入ったというのが今回の検定の経過です」(同)

 例えば漱石の「夢十夜」の元々の「活動の手引き」は「話のあらすじをまとめて発表し合おう」となっていた。修正後は、小説の一部がテレビドラマになると想定し、「新聞のテレビ欄にある、注目番組を紹介するコラムの記事を書いて発表し合おう」との内容になっている。

 こうして、文科省が“想定していない”とする小説が収録された教科書を検定に通すことに成功したわけである。しかしその後、第一学習社がHPでこの教科書について、“従来の現代文の教科書のイメージで利用可能”と宣伝していることが判明し、

「別の発行者や教育委員会から、この教科書と指導要領の関係についての疑義が生じ、さまざまな問い合わせがありました。そうした事態を重く受け止め、教科用図書検定調査審議会に依頼し、『今後はより一層厳正な審査を行う』という文書をまとめてもらいました」(同)

 文科省は8月25日にその文書を公表。新聞各紙で報じられたから覚えている方もいるのではないか。

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