韓国紙が報じた 日本の「坊ちゃん候補の総裁選」と韓国の「苦労人出身の大統領候補」

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高市、野田の両氏に触れなかった理由

 一方、今さら触れるまでもないことだが、河野太郎氏の父・洋平氏は元官房長官で自民党総裁、祖父の河野一郎氏は建設相・農林相・副総理まで務めた。岸田文雄氏の父・文武氏は元通産官僚で自民党衆院議員を5期、祖父の正記氏も衆院議員を6期務めており、「地盤看板カバン」を兼ね備えた一家と言えるだろう。

 自民党の衆院議員に占める世襲議員の割合は3割以上で、中央日報の訴えたいこともわからないではない。とはいえ、世襲とは言えない残りの総裁候補2人に触れずに「日本の政治は窮屈なほど変化に鈍感だ」と主張するのは、展開の仕方としていささか乱暴であるし、記事の方にむしろ窮屈さを感じるほどだ。

 中央日報の主張する「韓国政治の躍動性」が何を意味するのかあいまいで判然としないが、韓国では、大統領経験者のほとんどが退任後に逮捕・起訴されるなど惨めな末路を辿っている。仮に、政治家として天国と地獄を味わったりする浮き沈みの激しい環境が躍動性だというのであれば、あまりありがたいものとは言えないようにも思われる。

「日本の政治家のレベルが分かる」と

 ところで、中央日報としては河野氏が日本の首相に相応しいと考えているようだ。

「相対的に改革性向の河野氏の人気が高い」「人気もあり、能力もある。彼にないのは常識だけだ」という同僚議員のコメントを含め、他の候補者とは比にならないほど丁寧に紹介していた。この理由として、父・洋平氏による「河野談話」の存在や記憶が大きいと見る識者は少なくない。もちろん誰が総裁・首相に就いても河野談話は継承されるのかもしれないが、父親の業績に泥をぬるようなマネを息子がするはずがなく、内実を伴った日韓関係が構築されるのではないかという韓国側の期待も見え隠れする。

 その一方で、河野氏とは対照的に、総裁・首相になってほしくないと韓国側が祈る候補者の筆頭は高市氏なのかもしれない。27日、“反日教授”として有名な徐坰徳(ソ・ギョンドク)誠信女子大学教授が自身のSNSで高市氏への批判を展開した。

 高市氏が兵庫県議会とのオンライン懇談会で「竹島にこれ以上構造物を作らないようにする」と述べたことに対し、「他国の領土を自分がどうにかするという発言はあまりにも礼儀を欠いた無礼なことだ」「高市前総務相! 言葉に気を付けてください!」「日本の政治家のレベルが分かる」などと、まくしたてるような具合であった。

 たとえ総裁選で敗れたとしても、高市氏は事前の予想よりもはるかに支持を広げていると日本国内では伝えられている。今後、高市氏は当初より健闘したことを評価され、新政権では重要閣僚や党内の要職で処遇されるという見方もある。韓国が嫌う安倍元首相の直系とも言える政治家の存在感が増す可能性は大だ。これもまた、韓国にとっては避けたいシナリオだろう。

羽田真代(はだ・まよ)
同志社大学卒業後、日本企業にて4年間勤務。2014年に単身韓国・ソウルに渡り、日本と韓国の情勢について研究。韓国企業で勤務する傍ら、執筆活動を行っている。

デイリー新潮取材班編集

2021年9月29日掲載

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