輪転機大手「東京機械製作所」の株買い占めで新聞社と政府が右往左往する理由

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「潔く戦う覚悟を決めています」

 外為法に詳しい政府関係者は、こう話す。

「ADCにそのまま外為法が適用できるかどうかは別にして、背後の資金を含めて、さまざまな観点で情報を集めています。当然、安全保障の観点からも関心を持っている」

 新聞各社や政府の危機感は高まるが、ADCは今のところ、東京機械買収を強行する姿勢を崩していない。9月17日には、東京地裁に東京機械の防衛策を差し止める仮処分を請求。それに先立つ11日、アンセム・ウォン社長は自身のフェイスブックに「腹をくくり、潔く戦う覚悟を決めています」と表明している。

 こうした姿勢は、東京機械の株価上昇を期待する個人投資家などにとって、「メディア、政府の介入に毅然と抵抗している」ように受け取られるようだ。インターネットの掲示板には、《買われたくないならば、東京機械は上場しなければ良い》《本当に輪転機が大切ならば、新聞社が東京機械の株を買い、支援すべきだ》といった投稿が散見される。

真偽は依然不明

 ADCの真の狙いはわからないが、東京機械株の売買は決着まで過熱が続きそうだ。証券会社の幹部は、こう解説する。

「個人投資家が、ツイッターなどに書き込まれた『何月何日までは上がる』『しっかりホールドすべき』などという値上がり情報などに焚き付けられているところは、仕手筋のやり口のようにも見えます。安全保障よりは資金稼ぎのような印象で、おそらくADCは東京機械を買収できれば、そのまま会社を丸呑みし、資産や事業を吸収するのではないでしょうか。メディアや政府は、中国政府が絡んでの『言論統制か!?』と慌てたのでしょうが、ADCにそんな目的はないのではないかと思います」

 とはいえ、仕手筋として始まったとしても、中国系マネーが老舗企業を買収し、そこを中核にして日本の経済、市場に浸透していく可能性がある。

 東京機械の場合、買収されたことで日本のメディア事業が弱体化すれば、社会基盤が揺らぎ、安全保障面での課題に波及するのは間違いない。中国系マネーの日本浸透の一環なのか、それとも安全保障が狙いなのか。今後も注視すべき、得体の知れない動きが起きていることは確かだ。

デイリー新潮取材班

2021年9月28日掲載

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