紀平梨花が羽生結弦の恩師に師事 これまで所属先が決まらなかった背景に“女帝”の存在

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 いよいよフィギュアスケートがシーズンインだが、ここにきて日本の舞姫に注目が集まっている。北京五輪でメダルに期待のかかる紀平梨花(19)が、あの名伯楽に師事するというのだ。

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 今月8日に紀平のマネジメント会社が行った発表に、強豪選手を抱えるロシアのメディアは〈絶対に油断してはならない〉と報じて警戒感をあらわにしている。

 件の発表を簡単にまとめると、今シーズンの紀平はカナダに練習拠点を移し、羽生結弦やキム・ヨナなど五輪の金メダリストを育てたブライアン・オーサー氏らの指導を受けるという。

 とはいえ、共同通信が昨年の6月13日付で配信したスクープで、紀平は同年夏にもオーサー氏のいるカナダに渡る予定と報じられていた。実に1年遅れで夢が叶った形だが、ここに至るには紆余曲折があった。

「紀平は所属先が定まらず、迷走を続けていました」

 と振り返るのは、スポーツ紙のフィギュア担当記者。

「彼女は小学生の頃から、『関大KFSC』で濱田美栄コーチの指導を仰ぎ、GPファイナル優勝など世界のトップ入りを果たします。高校を出たら濱田コーチがGMを務める木下グループのクラブに所属する予定でしたが、紀平はオーサー氏の指導を希望。それを聞きつけた共同の記者が昨年の段階で報じたわけですが、コロナの影響でカナダへの渡航が頓挫。一連の出来事に“女帝”の異名を持つ濱田コーチとも不協和音が生まれ、木下グループも支援を撤回。所属先がなくなってしまったのです」

 そこで紀平が頼ったのは当時、在学していたN高校。角川ドワンゴ学園が運営する通信制の学校だ。その後昨年11月にはトヨタが紀平の入社を発表、北米の感染状況も落ち着いたことで、ようやくオーサー氏の指導を受けられることとなったのだ。

 それでもなお課題は多い。元フィギュア五輪日本代表でプロスケーターの渡部絵美氏が言うには、

「紀平選手は4回転ジャンプのうちサルコウしか成功させていませんが、世界のトップ選手、特にロシア勢は一番難しいとされる4回転ルッツも含め、4回転ジャンプを三つも四つも成功させています。世界戦でスタンダードになりつつある以上、紀平選手が北京五輪で活躍できるか否かは、4回転ジャンプの成功率を上げることにかかっています」

 それには何が必要か。

「筋力や身体のバランスなどを極限まで突き詰めて練習を繰り返し、成功した体験が本番での自信に繋がります。彼女が拠点にするカナダのクリケットクラブは、フィギュアの専用リンクを備え、私も滑ったことがありますが非常に集中できる。飛躍を期待したいですね」

 自らの希望を貫き通し、最高の環境を得た紀平。来る五輪のリンクに立つ日には、何本の4回転ジャンプを見せてくれるか。

週刊新潮 2021年9月23日号掲載

ワイド特集「『格付け』の舞台裏」より

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