「伊藤詩織さん」と「山口敬之元TBSワシントン支局長」が東京高裁で直接向き合った中身

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山口敬之氏の主張は?

 このあと、彼女は山口氏から受けた性暴力のため、PTSDによるフラッシュバックやうつ状態を経験したこと、さらに被害者を「ステレオタイプ」で見ることの理不尽さなどについて、

「事件直後、被害届を出そうとした私に対し、捜査員が“君の人生が水の泡になってしまうからやめなさい”と言いました。どんな事件でも被害者側に沈黙させる方が被害者のために良いのだとされてしまう社会の仕組みの元では、これからも誰かを長期間苦しめてしまうでしょう」

 と言及したうえで、最後にこう結んだ。

「被害者が司法できちんと守られること、そしてこれ以上“真の被害者”という勝手なステレオタイプによって、誰かを貶めるような出来事が起きないことを願っています。この控訴審は新型コロナウイルスの影響により期日が延期されました。そのような大変な時期にもかかわらず、ここまで丁寧に審理していただき、本当にありがとうございました」

 一方、山口氏は「伊藤詩織さん」と呼び掛けながら、次のように自身の主張を繰り返した。

「伊藤詩織さん、伊藤詩織さんはあの夜、寿司屋のトイレから翌朝5時頃ホテルで目を覚ますまで記憶がないと主張しています。本人が記憶がないと言っていることについて、その主張を第三者が覆すことは大変難しいことです。しかし、記憶を無くす前と後についてのあなたの主張にはたくさんの明らかな嘘や矛盾があります」

中村格・新警察庁長官への思い

 そして山口氏はこう続けた。

「あなたがもし本当にジャーナリストになりたいと思っているならば誠実に真実に向き合うことを選択するはずです」

 公判は30分ほどで終了したが、その後、伊藤さんは各社の囲み取材に応じた。その際、警察庁長官に就任する中村格氏について問われ、

「中村格氏に対しては、なぜ(山口氏の)逮捕を直前に止めたのかという件に関して、はっきりとした理由をまだ述べていただいていない状態です。何度もお手紙などでお伺いしたことがあるんですけど、まだなぜ、どのような経緯で逮捕を止めたのか、何を判断して逮捕を止められたのかという返答がありません。これは、とても個人的な事件のように聞こえるかもしれませんが、このようなことが可能になってしまうということは逆に今後(中村氏の判断次第で)逮捕ができてしまう、もしくはされない、同じようなことが繰り返される危険があると思います」

 こう答え、以下のように想いを述べた。

「(そうしたことが)普通に暮らしていて自分の身に起こるなんてことは考えないとは思うんですけど、これがもし、自分や大切な人の身に起こったらどうなるんだろう、どういった気持ちになるんだろうということは皆さんにも考えていただきたいです。そして中村氏にはそのような重要な決断をする際には、きちんと説明をする、ということをはっきりしていただいてから(警察庁)長官になっていただきたいというのが私の気持ちです。さらに、そういった重要なことを説明をしない方が、警察庁の長官になられるということは大変恐ろしいことだと思います」

 本件控訴審は来年1月25日に東京高裁で判決が下される。

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