「コロナ自宅療養者を診たいのに診させてもらえない…」 医師が訴える“医師会の壁”

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 厚生労働省の9月17日の発表によると、全国に9万9928人いる新型コロナの療養者のうち、自宅療養者は半数以上の6万442人にのぼる。1日時点ではおよそ13万人だった。対応に臨む医療現場の苦労は察するに余りあるが、一方で「医師が患者を診たくても診れない」という信じがたい事態も起きていた。

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「昨今の状況を鑑み、当院でも発熱外来を設けるなど、コロナ患者さんの対応に本腰をいれはじめました。自宅療養中の患者対応も行うつもりでいたのですが、東京都から“お断り”されてしまったのです」

 と証言するのは、東京・港区にあるミネルバクリニックの仲田洋美医師だ。もともとは新型出生前診断を中心とする遺伝子検査をメインに行っていたが、総合内科専門医である仲田医師は、呼吸器専門医である別の医師とともに、自宅で療養する新型コロナ患者の往診業務を始めようとしたという。

 なぜ仲田医師の申し出は断られたのか。そもそも、診療にはこんな“ハードル”が設けられているという。

「現在、東京都在住者がPCR検査で陽性判定を受けた場合、都の自宅療養者フォローアップセンター、もしくは市や区の保健所が健康観察などの対応にあたります。そして具合が悪くなった場合には医師が診療に赴くわけですが、都の担当者からは『そうした業務は医師会に委託している。だから医師会に所属していない医師は参加できません』と説明されました。医師会未所属の医師は、手を挙げても患者さんの元へ行けないのです」

 東京都が4月に発表した「新型コロナウイルス感染症の自宅療養者を対象とした医療支援の強化について」という資料には〈東京都医師会等と連携し、自宅療養者に対するフォローアップ体制を強化することとしました〉とある。医師会という組織について医療ジャーナリストの解説を聞こう。

「日本医師会のもとに都道府県医師会があり、その下に約890の郡市区医師会があるという組織です。入会するか否かは任意で、2020年12月1日時点の医師会員は17万3328人。18年度の時点では、全国の医師のうち63%が所属しています」

 東京都でいえば、同じ18年度の所属割合は52%と、全国平均よりさらに低い。同年度の東京都の医師の総数は約4万2500人だから、単純に考えれば、相当数の医師が自宅療養患者を診療できない環境にあるというのだ。

 先の仲田医師が続ける。

「にもかかわらず9月6日には、東京都から『都内の各診療所はコロナ診療に参加せよ』とのお達しがありました。厚労省の通知に基づく要請なわけですが、医師会未所属の医師は自宅療養者を診られない仕組みはそのまま。おかしいと思いませんか」

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