テレビから消えたウーマン村本を追うドキュメンタリー プロデューサーは「忖度した」と告白

吉田潮 TVふうーん録 エンタメ 芸能 2021年09月22日

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「面倒臭いからやめておこう」と思う場面は日常でもよくある。ちょっとエキセントリックな物言いの人や、他人を罰したくてウズウズしているオーラを眉間から発している人、被害者ヅラして猛攻撃してくる人には、極力関わりたくないものだ。個人レベルでもそうなのだから、企業や組織はより慎重に予防に徹するだろうな。

 でも先回りしすぎて、あれもダメこれもダメ、では、世界がつまらなくなる。どこかで見たようなモノばかり並べば、客が離れるのも必至。あ、何の話かって、地上波テレビ局の話ですわ。

 テレビ番組を制作する側の本音、打算と忖度と限界、新奇性のある企画を出せない息苦しさをうっかり映像にまとめてしまったドキュメンタリー、それが「村本大輔はなぜテレビから消えたのか?」だった。放送したのはBS12。もう読めるよね、ダースでもジュウニでもトゥエルブでもなくトゥエルビな。

 お笑い芸人・ウーマンラッシュアワーの村本大輔が、地上波に出演しなくなった背景を、ドキュメンタリージャパンの日向史有ディレクターが追う。2013年の「THE MANZAI」で優勝し、一躍売れっ子となった村本。原発や政治のネタを始め、SNSでつぶやいていたら、声が異常に大きい少数精鋭部隊から目の敵に。2018年の討論番組に出演したときの発言が、地上波テレビ局の腰をズサササーッと引かせた。ここに擬音いる? と思うが、それくらいの引き潮で。200本近くの番組に出演していたのに、昨年は1本。そんな彼の来し方行く末に密着&インタビューしたこの番組が「衛星放送協会オリジナル番組アワード」のグランプリを受賞したのだ。

 芸人にありがちなホモソーシャルで徒党を組むことなく、我が道を行くスタイルは大賛成だし、村本の政治ネタは面白い。酸欠寸前までしゃべり切った後のドヤ顔も好き。原発所在地の憂いや被災地の前を向く姿勢が笑いを通して伝わることも確実にあるし、心意気もしかと受けとめた。村本を英雄化するつもりは毛頭ない。この番組の最大の見どころは、彼の本懐を通して、地上波テレビ局の不都合な真実を炙り出しちゃったところだ。

 インタビューは村本だけでなく、制作会社のプロデューサーにも敢行。村本の番組企画が立ち消えになったのは、現場が空気を判断。日和(ひよ)った、忖度したと告白。冒頭の「面倒臭いからやめておこう」である。さらにはBPOの元委員長の談も。「政治的に公平」とうたう放送法は法規範ではなく倫理規範で、本来は制作側に表現の自由があるのだという。つまり、番組の5W1Hを選ぶのは制作側の自由なのに、自ら勝手に縛り萎縮し不自由に追い込んでいるというわけだ。及び腰の露呈にはテレビ屋の良心の欠片(かけら)があった。そこに拍手喝采。

 政治、宗教、芸能事務所、スポンサーのタブーでがんじがらめの地上波。憂いと嘆きで終わらせないテレビ屋がいて、BSや配信で雄叫びをあげて評価される流れには私も喜んで乗っかる。泥船から清流に浮く笹舟へ。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2021年9月23日号掲載