コロナ感染経路、日本の認識は世界の非常識 今後は「熱交換換気」と「ヨウ素液うがい」

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「同じ轍を踏むのでは」

 政府は9月9日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う行動制限緩和の原案を提示した。

 緊急事態宣言が出ている地域でも、自治体などの第三者認証を受ければ飲食店は酒類提供が可能になり、接種証明書などがあれば県境を越える移動なども認める方針だ。実施時期は、希望するすべての人へのワクチン接種が完了する今年11月頃だという。8月下旬から全国の新規感染者数の減少傾向が鮮明になっていることも、政府の制限緩和の動きを後押ししている。

 方針が示されると早速、医療現場からは、「まだ早い。ワクチンが行き渡るのは重要だが、人出が増えると感染者が増えるということを繰り返してきた。今までと同じ轍を踏むのではないか」と懸念の声が上がった。専門家の多くは「感染者数が減少した理由がはっきりしない。9月下旬以降、再び増加するのではないか」と警戒している。

 減少の要因について、厚生労働省専門家アドバイザリーボード座長の脇田隆字・国立感染症研究所所長は、「緊急事態宣言の効果で人の移動がやや落ち着いてきたことや天候の影響、またワクチンの接種が進んできたことが(減少の要因として)大きい」と分析している。

的外れの指摘

 まず人流についてだが、緊急事態宣言の発出前後でほとんど変化がなかったことがわかっている。専門家たちは宣言発出直後に、「何か新しい抑制策が加わったわけではないから減る要素はない。お盆明け、夏休みが終わると増える可能性が高い」と悲観的な予測を立てていた。だが、蓋を開けてみると真逆の結果だった。「PCR検査の実施数が少なく、実態を反映していないのではないか」と疑問視する専門家がいるが、陽性率や発熱相談件数も大幅に減少しており、的外れの指摘と言わざるを得ない。

 次にワクチン接種の効果だが、ワクチンの接種回数の増加はペースダウンしている。注目すべきはこれまで二の足を踏んでいた若者がワクチン接種に積極的になったことだ。このことは若者の新型コロナウイルスへの脅威認識が高まったことを意味する。彼らがリスク回避の行動を積極的にとったことが、感染抑止につながった可能性もある。

 最後に「天候」だが、「最近の天候不順により外出が抑えられた」との説があるが、効果が本当にあったかどうかはわからない。「呼吸器感染症の一種である新型コロナウイルスの感染状況は気温や湿度と関係がある」として世界各地で研究が進められているものの、これまでのところ明確な相関関係は示されていない。デルタ株という感染力が強い変異株が出現したせいもあり、今年の夏に世界各地で感染の再拡大が起きたことから、気温や湿度が与える影響は小さいと言えるのかもしれない。

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