音楽フェス「スーパーソニック」強行開催 記者が見た”厳戒態勢”と“フジロックとの違い”

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 “密フェス”が社会問題化するなか、千葉県千葉市の「ZOZOマリンスタジアム」で大規模音楽フェス「スーパーソニック」が開幕した。緊急事態宣言下にある千葉市が中止を求める中、主催者が「感染防止対策を徹底する」として開催に踏み切り、話題を集めていたフェス。実際、現場はどうだったのか。8月に「フジロック」を取材した記者が会場内を見てきた。

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引くも地獄、進むも地獄

 感染対策が不徹底だと批判されたフジロックの後、愛知県常滑市で起きた「飲酒フェス」騒動。スーパーソニック開催直前、フェス批判は一気に高まった。9月上旬、当初後援していた千葉市は、主催者に延期や規模縮小を要請。だが、主催者側は「出演者のスケジュールの都合で延期は難しい」と跳ね除け、県は後援を取り消す事態となった。顛末をフェス事情に詳しいライターが解説する。

「主催者は昨年、コンサートが軒並み中止に追い込まれ経営に行き詰まり、今回は中止も延期も受け入れられない状況だった。すでにチケット1万3000枚も販売済みだったし、ここで自ら中止を決断すれば、出演者や設営業者にキャンセル料を払わなければならなくなってしまう。とはいえ、世論が反対し自治体も見限ったイベントを強行すれば、今後の補助金や銀行融資も危うくなる。引くも地獄、進むも地獄だった」

 記者が訪れたのは9月17日午前11時過ぎ。朝から台風14号に伴う悪天候で、参加者の多くはレインコートを羽織っていた。

 入場ゲートでは、検温、消毒、荷物検査、そして感染対策アプリなどがスマホにインストールされているか、チェックされる。この流れはフジロックでも同じだったが、スーパーソニックの方が厳しい気がした。バッグの底の方まで調べられたからだ。そのため、常に入り口は混雑している状況だった。

 通常開催だとメインステージとなるスタジアムのほかに、隣接するコンベンションセンター「幕張メッセ」内にサブステージが4つほど設けられているとのことだが、今回はメインステージのみ。メインステージの観賞場所は、スタンド席とアリーナ席の二箇所だ。記者はまずスタンド席に入ることにした。

 すると、前を歩いていた男性客が係員に呼び止められた。

「そのマスクでは入れません」

“ウレタンマスク警察”までいたとは驚きだった。彼は入場時に配布された不織布マスクを着用するよう求められていた。会場のあちこちに「不織布マスク着用」と書かれた看板も。なお、スタジアムに入る際も、バッグの検査、アルコール消毒を改めて求められた。

 ステージではラッパー二人組「どんぐりず」のライブ中だったが、スタンド席はガラガラで、昭和時代のパ・リーグの試合風景のよう。グラウンドのアリーナ席には、小雨が降りしきるなか、レインコートに身を包んだ400〜500人ほどの客が観賞している。しばらく見ていて、気になったのは係員の多さであった。「声援禁止」などというプラカードを掲げた係員が通路のあちこちをひっきりなしに歩き回っていた。

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