日米156勝「前田健太」に試練…投手に厳しすぎる名球会200勝の“分厚い壁”

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170勝を基準とすれば

 2000本安打は、9月4日に達成した栗山巧(西武)で54人目となったが、勝利数の54位は、162勝の土橋正幸(元東映など)になる。これを見ても、名球会の基準は、投手に不利だといえるだろう。仮に170勝を基準とすれば、今年達成したダルビッシュも含めると49人となる。このあたりが新しい基準として、ふさわしいラインではないだろうか。

 さらに2000年以降に引退した170勝以上、200勝未満の投手を洗い出してみると、以下のような顔ぶれが並ぶ。

西口文也(元西武):182勝
石井一久(元ヤクルトなど):182勝
斎藤雅樹(元巨人):180勝
星野伸之(元阪急など):176勝
桑田真澄(元巨人など):173勝
三浦大輔(元DeNA):172勝
岩隈久志(元近鉄など):170勝
松坂大輔(元西武など):170勝

 田中、ダルビッシュ以外の現役選手では、石川雅規(ヤクルト、9月7日終了時点で通算176勝)も対象となる。いずれも長く先発として、一線級で活躍してきた投手ばかりだ。2000本安打を達成したメンバーと比較しても、選手としての格は決して低くない。

 投手の分業制が進んで、昔よりも勝利数をあげるのが難しくなり、投げるボールの高速化から体への負担も大きいことを考えると、名球会入りの基準を引き下げてもよいのではないだろうか。

「300ホールド」を“新基準”としても

 これに加えて、“新基準”として提案したいのが、中継ぎのホールド数だ。現行のホールド基準は、05年に制定されたもの。通算成績では宮西尚生(日本ハム)の358ホールドが日本記録となるが、これは「250セーブ」と比較しても、決して価値が劣るものではない。現在の野球界では、中継ぎの重要性が増しているだけに、「300ホールド」を“新基準”としてもおかしくはないだろう。

 また、上原浩治(元巨人など)は史上初の100勝、100セーブ、100ホールドを達成している。これもまた、「250セーブ」と比べても決して劣るものではない。それを考えると、勝利数、セーブ数、ホールド数の「合計数」でも、新たな基準を検討してもよさそうだ。

 通算記録は、時代によって価値は変わっていく。近い将来、名球会の投手に関する基準が見直され、活躍に応じて正しく評価される時代が来ることを望みたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年9月11日掲載

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