高校野球の名将が次々勇退…次世代の名監督は智弁和歌山・中谷監督か、それとも

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世代交代の波が訪れている

 2年ぶりの開催となった全国高校野球選手権、いわゆる夏の甲子園大会も幕を閉じたが、今年ほど実績を残した高校野球の監督が揃って退任を発表した年も非常に珍しい。

 まず、7月1日に今年の選抜高校野球を制するなど、春夏通じて4度の甲子園優勝を成し遂げた東海大相模・門馬敬治監督(51)が健康上の理由でこの夏限りの退任を発表した。チームは、神奈川大会の準々決勝まで勝ち進んだものの、部内の新型コロナウイルス感染で出場辞退となった。

 関東大会ではたびたび東海大相模としのぎを削った浦和学院・森士監督(57)は、地方大会での優勝インタビューで、今夏限りの退任を報告した。夏の甲子園では、初戦で日大山形に敗れて、早々に大会を去っている。

 また、8月28日には帝京で約50年の長きにわたって指揮を執り、春夏合わせて3度の優勝を達成した前田三夫監督(72)が今夏限りで勇退することが明らかになった。このほか、9月3日には、一昨年の夏の甲子園で星稜を準優勝に導いた林和成監督(46)が来年3月限りで退任することが発表されている。

 門馬監督、林監督はまだまだ若いだけに、復帰や他校で指揮を執る可能性は十分にありそうだが、令和の時代を迎えて、高校野球の指導者に世代交代の波が訪れていることは間違いないだろう。

選手に合わせてチームを作る

 では、新世代の名将候補として、名前が挙がるのはどんな監督だろうか。

この夏に存在感を示したのは、21年ぶりの夏の甲子園優勝を成し遂げた、智弁和歌山・中谷仁監督(42)だ。ドラフト1位でプロ入りしながらも、不運な怪我もあって結果を残せず、長年控えでチームを支えてきた経験が、現在の指導にも生きている。甲子園通算歴代最多となる68勝を誇った高嶋仁前監督時代の良さを残しながらも、上手く時代に合わせてチームを変革してきた手腕は見事という他ない。

 中谷監督に近い世代では、一学年下の敦賀気比・東哲平監督(41)も忘れてはならない。2011年に監督に就任すると、14年の夏の甲子園は4強進出、そして翌年の選抜では、福井県勢として初優勝を飾った。今年のチームもまた、夏の甲子園で8強に進出するなど、安定した成績を残している。東監督は、一つのチームカラーを徹底するのではなく、その年の選手に合わせてチームを作るのが上手く、絶対的なエースが不在だった今年は、攻撃力を強化して、夏の甲子園で勝ち進んだ。

 一方、30代の監督も負けてはいない。作新学院の小針崇宏監督(38)は、筑波大を卒業した直後の06年秋に23歳の若さで監督に就任すると、09年には31年ぶりの夏の甲子園出場。さらに、11年からは10大会連続で栃木大会を制している。16年には今井達也(西武)、入江大生(DeNA)などを擁して、実に54年ぶりとなる夏の甲子園優勝も成し遂げた。

 38歳という若さで、既に甲子園通算勝利数は19勝を数えている。これは、現役監督の中で上位だ。小針監督就任後の作新学院の特徴といえば、送りバントを用いない強攻策である。今年の夏の甲子園では、初戦で高松商に敗れるも、13安打7得点と持ち味である打力は十分に発揮した。

 春から夏にかけて急激に力をつけてくる調整力の高さは、もはやチームの伝統と言えるほど。攻撃と守備は、毎年しっかり仕上げてくるので、前出の今井や入江のような力のある投手を揃えれば、再び全国の頂点に立つ日も近いだろう。

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