「ジェンダーレス」がファッション市場でキーワードに 各社が急速に商品展開

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 ファッション界にも「多様性」の波が押し寄せ、従来の男性・女性用の枠を超えた衣服が登場している。

 無印良品で知られる良品計画が展開する「MUJI Labo」は2019年から性別、年齢を問わず着られる商品を販売。ユナイテッドアローズは今年9月に立ち上げるブランド「CITEN(シテン)」でユニセックスの商品を一部展開。三陽商会のセレクトショップ「LOVELESS(ラブレス)」も10月に男女兼用のニットやスウェットなどを発売する。

 三陽商会広報によると、

「昨年春ごろから女性のお客さまが、サイズにゆとりのあるメンズ商品を購入されることが増えました。今年はジェンダーレスがファッション市場でもキーワードとなり、性別の垣根がなくなってきています」

 これまではユニセックスを謳う商品でも、ベースはメンズ向けだったりした。その点、もっと“攻めて”いるのがオンワードHDの子会社オンワードデジタルラボが4月から手がけるブランド「IIQUAL(イーコール)」。ジェンダーフリーを前面に押し出しているのである。

「『IIQUAL』の服は全部、メンズ・ウィメンズの概念がありません。ワンピースもスカートもシャツもパンツも自由に着こなし、自分らしさを表現したいという方がいると考えています」(オンワードHD広報)

 男性にワンピースやスカートの提案とは冒険的だが、

「男性が着られるワンピースやスカートなどは特に時間をかけて試行錯誤しました。体が硬い男性には背中のファスナーが上げづらいとの声を受け、ファスナーに長いテープをつけるなどしています。スカートもパンツと巻きスカートを合わせたような、新たなデザインを創出しました」(同)

 商品を展示するショップも一部あるが、原則は直販サイトでの販売。現在のところ購入者の“生物学的”男女比は4対6。熱心な購買層は20代男性のようだが、老舗オンワードの知名度から40~50代の購買も多いという。夫婦やカップルで共有する例もあるそうだ。ファッションジャーナリストの西山栄子さんいわく、

「多様性が言われる中で、自由に着たいものを着ようという志向の表れだと思います。海外のブランドでも見られる傾向です。ただ、ユニセックスや男女兼用、ジェンダーフリーなど看板は変わっても、こうした波はアパレル業界で繰り返し現れてきました。それは不景気な時。メーカーは他との差別化を狙うわけですが、それだけで売れるほど、この業界は甘くない」

週刊新潮 2021年9月2日号掲載

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