【おかえりモネ】百音は菅波先生と結ばれるのか 朝ドラ「ヒロイン」の複雑恋愛事情

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 現在放送中のNHKの朝ドラ「おかえりモネ」(NHK総合・毎週月〜土・朝8:00〜ほか)の“東京編”が、ある意味で佳境を迎えている。先週放送回で、清原果耶演じるヒロイン・永浦百音と医師の菅波光太朗(坂口健太郎)の気持ちが通じあったのだ。

 だが、途中で危うい展開もあった。百音の幼馴染で同級生の漁師・及川亮(永瀬廉)がふらっと東京に現れたのが、そのきっかけだった。亮は父・新次(浅野忠信)が再び酒を飲んで暴れたことを知ると、船に戻らず行方をくらましてしまう。

 百音の妹・未知(蒔田彩珠)は、昔から亮に想いを寄せていた。亮が本音を言ったり、弱音を吐いたりするのが自分ではなく姉ばかりであるという事実に“嫉妬”してしまったのだ。百音は亮を連れ戻すべく下宿を後にするが、そこに姿を現したのが菅波だった。菅波に対し、未知は百音が亮の元へ駆けつけたことを説明。続けて「あの2人(姉と亮)は昔から通じ合ってる……」と畳み掛けてしまったのである。

 この未知の暴走により、百音の運命の相手が菅波なのか、視聴者は分からなくなってきていたはずだ。百音としては苦悩する亮を助けるという選択肢もあったわけだし、未知のことを気遣い、亮とは幼馴染のままでいるという可能性もあった。さらには亮を気遣って菅波とも結ばれないということもあり得た。そして菅波の性格を考えると、百音と亮の関係性に配慮して自ら身を引く展開も考えられたのである。

 そもそも朝ドラは「ああ、ヒロインはこの人と結婚するな」とほぼ予想がつく作品が圧倒的に多い。そこで今回は「ヒロインとこの人は絶対結ばれる」という予想を大きく裏切った朝ドラを、2010年代以降の作品から紹介しよう。

視聴者の予想を裏切った作品たち

 まず、11年下半期作の「カーネーション」だ。洋裁店を立ち上げ、奮闘するヒロイン・小原糸子(尾野真千子)は戦争によって夫を失ったものの、戦後に周防龍一(綾野剛)という紳士服職人と出会う。仕事のパートナーとして時間を重ねるうちに、2人の間に特別な感情が芽生えていき、ついに糸子は告白。しかし周防には妻子がいたため、“禁断の恋”となったのである。

 2人の噂は次第に広まり、親戚や近所一同が糸子をいさめようとするなど大騒動に。糸子は何と言われようが、周防に店を辞めさせる気はなかったものの、隣町に周防の紳士服の店を開くことで解決を図るのであった。ところが次第に人間関係はギクシャクしていき、店が完成した日に、糸子は周防が心から喜んでいないことを知ってしまう。そして二人は疎遠になる。趣味で三味線を弾いたり、生地にハサミを入れる姿が格好よかった周防だけに、ぜひとも糸子は周防と結ばれてほしいところであった。

 12年上半期作の「梅ちゃん先生」では、主人公の下村梅子(堀北真希)が同じく医師の松岡敏夫(高橋光臣)と、ときには突っ込み、ときには突っ込まれ……のいい関係を築いていた。相思相愛となり交際を始めたのだが、梅子が開業したことで状況が一変。松岡は研究者、梅子は開業医と、それぞれの道をゆくことがベストだとお互い判断し、松岡のアメリカ留学を機に別れた。そして梅子が結ばれた相手は、幼馴染の“ノブ”こと安岡信郎(松坂桃李)だった。

 18年上半期作の「半分、青い。」は同じ日に同じ病院で生まれた2人が運命の相手として描かれていた。永野芽郁演じるヒロイン・楡野鈴愛と、萩尾律(佐藤健)である。だが、お互いを誰よりも理解し合っているにも関わらず、鈴愛は映画監督を志す森山涼次(間宮祥太朗)と結婚、律にもパートナーができ、互いに家庭を持つことに。それでも紆余曲折を経て、鈴愛は律と再婚した。結果的にハッピーエンドを迎えている。

 北海道を舞台にした19年上半期作の「なつぞら」も記憶に新しい。広瀬すず演じる主人公・奥原なつは東京の出身であることを同級生から悪く言われるが、これをかばった山田天陽(吉沢亮)と親しくなる。2人で絵画を嗜むうちに天陽はなつに好意を寄せていくが、なつはアニメーターになるため、上京を決意。夢を応援するため想いを諦め、天陽は彼女の背中を押したのだった。彼は送別会の席でなつへの想いを告白した。

 2人は東京と北海道で離れ離れになってしまうのだが、心は強く結ばれていた。だが、そこに遠距離の壁が立ちはだかる。結局、天陽は地元で結婚、夏も東京で同僚と結婚してしまった。それでもずっと2人は“心の友”の距離を保ち、関係は天陽が夭逝するまで続いた。

 さて、『おかえりモネ』の百音と菅波は結ばれる関係だった。思えば菅波は宮城県の登米にいるとき、「東京で2人が偶然出会う確率は1300万人分の2の奇跡だからありえない」と百音に言っている。百音が上京した後にすれ違っていたとはいえ、その奇跡を起こして出会ったわけだ。百音の運命の相手が菅波であることは、明らかだったのだ。

上杉純也

デイリー新潮取材班編集

2021年9月7日掲載

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