愛人・妻と共謀、59歳巡査部長が持続化給付金詐欺で書類送検 警視庁はなぜ逮捕しない?

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 9月3日、警視庁は、新型コロナウイルス対策の持続化給付金を国からだまし取ったとして、立川署交通課の巡査部長の男(59)ら4人を詐欺容疑で書類送検した。警察官が持続化給付金詐欺で立件されるのは全国で初めてだという。淫らな人間関係から始まったお粗末な犯行だが、気になるのは、なぜ身柄を取らなかったかという点だ。身内に甘すぎではないか。

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“報酬”は夫妻で山分け

「あなたの奥さん、パート勤務でしょ。だったら持続化給付金もらえるんじゃない?」

 昨年の秋頃、巡査部長にこう囁いたのは、飲食店に勤務する50代の女。ここから現職警官による“悪巧み”が始まるのである。警視庁担当記者が解説する。

「2人は3年くらい前から愛人関係にあった。その気になった巡査部長は、家に帰って妻に計画を持ちかけることに。妻の仕事は配送商品を仕分けするアルバイトだったのですが、個人事業主である“家政婦”と身分を偽り、コロナ禍で収入が減ったと虚偽の申請をしたのです。妻は当初、『バレたらまずい』と嫌がったようですが、巡査部長は『絶対バレないから大丈夫』と説得。実際に書類を作成したのは愛人と知人関係にある80代の男で、指南役だったとみられます」

 とんでもない警察官である。妻も妻で、夫の職業をどう捉えていたのか。昨年末、振り込まれた“報酬”の100万円は夫婦で山分けし、巡査部長は50万円を愛人のために使ったという。

「現金やプレゼントを貢いだと。おそらく、指南役の男にも手数料が支払われたと思われます」(同)

定年まであと1年だったのに、退職金がパー

 悪事はあっけなく露見する。パートで家計を支えていた妻は、巡査部長の扶養に入れるよう年間103万円以内の収入に抑えていた。だが、給付金の100万円が入ってきてしまったため、扶養から外さなければならなくなったのだ。市から立川署の会計課に税額変更の通知が来たため、妻が不正に給付金を受給していたことが発覚した。

 会計課から指摘を受け、巡査部長はすぐ妻に100万円を返納させたが、

「そうは問屋が卸しません。事情を聞かれた巡査部長は当初、『妻が勝手にやったこと』と言い逃れようとしました。しかし、今年5月頃に妻への事情聴取も始まったため、もう隠しきれないと観念、すべてを白状した。当然、懲戒免職です」(同)

 巡査部長の年齢は59歳。あと1年待てば定年を迎え、約2000万円もの退職金がもらえたというのにパーとなってしまった。

「バカにもほどがありますよ。59歳でまだ巡査部長というところを見ると、大して評価もされないまま警察官をやってきたのでしょう。警視庁は4人とも起訴を求める“厳重処分”の意見を付けて書類送検しました」(同)

身内に甘すぎる警察組織

 しかし不思議なのは、なぜ書類送検だったのかという点である。今年6月、経済産業省のキャリア官僚2人が、新型コロナウイルス対策の家賃支援給付金550万円を国から詐取した事件では、警視庁捜査2課は2人を逮捕している。同じ公務員による詐欺事件だ。違いは何なのか。

「建前として、巡査部長の事件は、任意の取り調べの段階ですでに被害金額は弁済され、自供しており、証拠隠滅の恐れがないという判断に基づいています。しかし、このような悪質な事案ですから、逮捕したって何ら問題はありません。昨年から今年にかけ、警視庁は何件もの給付金詐欺を立件し、容疑者の身柄を取ってきました。今年6月には3人の高校生も逮捕している。結局、警察組織は身内に甘いのです。逮捕となると、氏名も公表せざるを得なくなり、テレビに顔もさらされる。不祥事が大きく報じられたくないという魂胆もあるのでしょう」(同)

 定年間際の巡査部長への同情が処分に影響していたならば、看過できる話ではない。身内だからこそ厳しく対処し、綱紀粛正を図るべきだったのではないか。

デイリー新潮取材班

2021年9月5日掲載

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