デルタ株「空気感染」の防ぎ方 感染した場合の備蓄品リスト、要介護者がいる場合の対策は

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「自宅療養」を乗り切る重要ポイント

 これまで述べてきたような感染予防策を講じてみても、猛威を振るうデルタ株だ。家族に感染者が出てしまうかもしれない。

 報じられているように、現在、医療現場の逼迫に伴い、これまではホテルなどで隔離されてきた無症状や軽症の患者、そして入院が原則だった中等症の患者の一部も、自宅療養を検討すると政府方針が変更された。感染者の多くが家族のいる自宅での療養を余儀なくされ、多くのケースで家族も濃厚接触者と認定されて家に籠ることになる。

 そうなってから慌てないように、準備とシミュレーションを行っておこう。

 Q.食料・市販薬……必要な備蓄品リストは?

 感染者は発症日から10日間かつ症状軽快日から3日間、濃厚接触者も最後に感染者に接触した日から14日間は自宅待機を強いられる。

「それだけの間、家から出られないことを想定し、普段から必要なものを揃えておくのが大切です」

 と述べるのは、前出の藤田さんである。

「感染したときのために10日分程度の食料、飲料。市販の解熱鎮痛剤、ティッシュやトイレットペーパーなどもいつもより準備しておいた方がいい。食料については嘔吐や下痢の症状が出る方もいますので、レトルトのお粥やインスタントのお味噌汁、スープなど消化に良いものがお勧めです。飲料はポカリスエットなどのスポーツドリンクが飲みやすくていいでしょう」

 市販薬について、角田副会長が補足する。

「熱や頭痛などの症状がある場合に備え、カロナールやロキソニン、イブなど、普段から使っている薬を用意しておくといい。感染者がこれらで症状を和らげても問題はまったくありません」

 Q.パルスオキシメーターの選び方・使い方は?

 パルスオキシメーターとは、指先に光を透過させ、血中の酸素飽和度を測定する機器だ。なぜこれがコロナ感染者に重要かといえば、

「これが96%以上であれば健常者と変わりませんが……」

 とは矢野医師。

「93以下になれば、入院が必要になってくるケースも。デルタ株は2~3時間で唐突に悪化するので、保健所に早急に連絡し、相談する必要があります。それを迅速に行うためにも、パルスオキシメーターはあった方がいいですね」

 価格帯は安いものでは千円台から売られているが、

「比較的まともなものを、という意味で5千円以上のものが推奨できます」(同)

 なかなか値が張るが、いざという時のことを考えれば、高いか安いかは言うまでもない。

「これからは体温計のように、一家に1台は常備しておくべきものですね」

 と後藤医師。

「ただし、指先で計測するため、冷え性だったり、マニキュアを塗ったりしていると変な値が出るので、注意が必要です」

 他方、肺炎になった時に備え、スポーツ用の酸素スプレーを用意すべし、との話がネットを中心に広がっている。ドラッグストアなどでは品切れが続出しているが、

 Q.酸素スプレーは必要か?

 角田副会長によれば、

「1缶分の酸素を吸ったところで、それだけでは肺炎にはとても対処できませんから、持っていても意味はないでしょう」

ティッシュにもウイルス

 では、こうした準備をした上で、実際に家族が感染した場合、自らの罹患リスクを減らすため、他のメンバーはどのように世話をすべきだろうか。

 Q.家でもマスク?

「当然、そうなります」

 と角田副会長が続ける。

「感染者の方とは部屋を分ける。住宅事情でそれが無理なら、少なくとも2メートルは空けてカーテンなどで区切ります。患者さんは食事は自分の部屋で。食器も使い捨てがベター。部屋は頻繁に、1回につき5~10分程度は換気をする」

 患者の世話をする家族については、

「1人に限定し、接触リスクを最小限にします。患者さんに接触した後は念入りに手洗いや消毒をしてください」

 Q.シーツ、トイレ、入浴は?

「患者さんの使用したシーツは嘔吐や下痢などがあれば、ウイルスが付着している可能性もあるので、80℃、10分以上の熱湯消毒をしてから洗濯を行うのが理想です。衣服は患者さんと家族のものを一緒に洗って問題ありません。トイレは家の中に二つある場合は分ける。共有する場合は、換気扇を働かせ、感染者が使用した場合は、便座、流水レバー、ドアノブなどを消毒する。風呂は入っても問題ありませんが、感染者は最後に入るようにしましょう」

 Q.ゴミ処理の仕方は?

「鼻をかんだティッシュなどにもウイルスが付いています」

 と寺嶋教授。

「まずは感染者自身に密閉してもらう。その後、家族が手袋などをしてゴミ袋を二重にして捨てるのがいい」

 自宅療養で最も悩ましいのは、感染者が、子どもや老親などお世話や介護の対象者を持つ場合である。

 Q.親が感染した場合、子どもはどうする?

「大変困難ですが、感染しても、その親が面倒を見るしかありません」

 とは、矢野医師。

「その場合は、十分な感染予防体制を取り、うつさないようにする。非常に難しいですが……。もし祖父母がいて、既にワクチンを2回打っているのであれば、任せたり、預けてしまうのも一考です。リスクが高い方たちなのでなるべく避けた方がいいですが、親子が共倒れするより、ましでは」

 Q.要介護者がいる場合は?

「こちらも非常に難しい問題です」

 と角田副会長。

「本来は接触しないようにしてほしいですが、なかなか難しいですよね。介護保険を受けているのであれば、ケアマネージャーに相談し、訪問介護をお願いするなどしてみるのはどうでしょうか」

 付随して言えば、8月20日には痛ましい事例が発生している。熊本県で50代の単身男性が自宅療養中に死亡した。この男性は症状が悪化し、保健所に入院を勧められたが、ペットの猫の預かり先がないことを理由にそれを拒否。自宅に籠ったままだったという。

 Q.ペットはどうする?

「知り合いに預かってもらうのが肝要です」

 と解説するのは、京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授。

「コロナはヒトから犬猫にも感染しますが、ほとんど発症しません。逆に犬や猫からヒトに感染した例は報告されていませんので、感染者のペットを預かっても大丈夫。知人が見当たらない場合でも、預かりサービスを行っている自治体や企業があります」

 事前にこうした情報を調べていれば先の男性も救われたはずだ。正しい知識は命を守るのである。

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