デルタ株「空気感染」の防ぎ方 感染した場合の備蓄品リスト、要介護者がいる場合の対策は

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電車でクラスターの可能性

 Q.マスクは「不織布」〇、「布」「ウレタン」は×?

 寺嶋教授は、

「飛沫やエアロゾルは、粒子が小さすぎると、マスクで防ぐのに限界がある」

 と言う。だから、なおさらしっかりマスクをすることが重要だというが、マスクのどこに留意すべきか。

「鼻を出していたり、何回も洗って緩んだりしているものはよくない。マスクと顔の間に隙間がある人が感染していると、ウイルスをまき散らすことになります。一番いいのは、顔との隙間が少ない不織布です」

 と説くのは矢野医師。また、角田副会長は、

「マスクは何歳からというのはありませんが、本人が許容できるならつけてほしい。子どもは布マスクが多いですが、息がしやすい分、ウイルスも通すので、不織布のほうが断然いいです」

 もちろん、ウレタンより不織布。ただし、矢野医師はこう加える。

「不織布のマスクもネットに入れて洗えば、4回くらい使える気がします。しかし、付着した菌が3日は残るので、洗わないなら毎日捨ててください。また、不織布とウレタンのマスクを二重にすると、すき間が少なくなって有効だと、米CDCも発表しています」

 Q.人との距離はこれまで通り?

「マスクをしっかりしていれば、1メートル以内の距離で話しても、ほとんどの飛沫はブロックされる一方、相手がマスクを適当につけていれば、エアロゾルは3~4メートル以上飛ぶので、距離をとってもリスクがあります」

 とは矢野医師の話。角田副会長はこう説く。

「これまで飛沫感染の場合、飛沫にある程度の大きさがあって放物線上に落ちていくので、1メートルくらい距離をとっていれば安心だという考え方でした。ただ、デルタ株のウイルス量が多いことを考えると、小さなしぶきにもある程度ウイルスが潜んでいて、小さい飛沫の場合はもう少し遠くまで飛ぶので、2メートルくらいは距離をとったほうがいい」

 Q.電車でもうつり始めたのか?

「会話がない、窓が一部開いている、という条件が揃えば、電車が混んでいても大丈夫なはずです」

 と宮坂氏は言うが、愛知医科大学循環器内科の後藤礼司医師はこう述べる。

「電車は、換気されていても明らかに密集地帯で、満員電車は特に危険だと思う。感染が広がるのは、人と共有している場所やモノからで、電車がそういう場所である以上、リスクがないとは言えません。どうしても乗るときは、できるだけ騒がずマスクをすること。それでも、マナーを守らない人と乗り合わせる危険性はあります。電車でクラスターが起きないのは、隣に座っている人がだれだかわからず、クラスターと認識できない、という事情もある。感染拡大が起き、家庭に持ち込まれている可能性もあると思います」

 Q.帰宅後すぐシャワーは必要か?

「衣服を着ていて、皮膚にウイルスは付着していないでしょうから、帰宅後すぐシャワーを浴びる必要はありません。手を洗うだけで十分です」(角田副会長)

 Q.祖父母は孫の「世話」をしていい?

「祖父母がワクチンを打っていれば、孫の世話をするのは手です。ただ、元来リスクが高い層なので、ワクチンを打っていなければ絶対にやめてください」

 と矢野医師。角田副会長はこう話す。

「同居の場合、ワクチンを打っていれば、祖父母は孫たちと普段通りに接していいでしょう。ワクチンを打っていない場合、孫たちから打つように声をかけてもらい、“孫と遊ぶためには打つしかない”と思ってもらえればいいですね」

家庭生活の送り方

 Q.食事は家族一緒でOKなのか?

「食事はできれば時間差にしたり、対角線上に座って、向き合わないようにしたりする工夫が必要です。食事中の会話もなるべく控えるのが望ましい。あとは部屋の換気で、概ね30分に1回は必要ですが、デルタ株の場合は30分に2回か、常に窓を開けて網戸にしておくくらいのほうが、よいかもしれません」

 と寺嶋教授。角田副会長がつけ加えるには、

「できれば外出していた人だけでも、時間をずらしてほしいと思います。食器は洗うのは普段通りで構いませんが、共有するのは避けましょう。おかずも大皿で出すより、個人個人で分けて出すほうがよく、大皿なら取り箸をつけるだけでもだいぶ違うと思います」

 Q.空気清浄機の出番はあるか?

「換気には窓を開けるのが一番ですが、空気清浄機にも効果があるとわかっています。その場合、部屋の真ん中に置くと空気が効率よくきれいになる、という実験結果があります」

 矢野医師はそう話し、換気について加えて言う。

「天井が低い部屋は空気が淀みやすいので、窓を開ける回数を増やすといい」

 Q.消毒はどこをどこまでする?

「国立成育医療研究センターのHPに、子どもがいる家庭での注意点が書かれていますが、“汚れた衣服の洗濯”“共用部分のそうじ・消毒”などは、環境感染がほとんどないいま、あまり意味がありません」(宮坂氏)

 その分、飛沫対策に注力すべきだという。

 Q.妊婦が感染前に絶対しておくべきことは?

「妊婦の感染は8割が家庭内なので、まずは家族が気をつけること。できればワクチンも打ってもらいたいです。米CDCや日本産科婦人科学会も、いまは妊娠中のいずれの時期にも接種可能だという見解です。妊婦にも普通の人と同程度の効果があり、打っても妊娠の経過に変わりがないなど、情報が積み重なってきました。妊婦が感染すると重症化リスクが高いという報告もあり、感染した際の早産の恐れも考えると、ワクチンを打つリスクより感染したときのリスクのほうが大きいです」(寺嶋教授)

 北須磨訪問看護・リハビリセンターの藤田愛所長が加えてアドバイスする。

「自分がコロナに感染した場合、家族が感染した場合、どうしたらいいか、かかりつけの産科の先生に相談しておくといい。いまは妊婦さんへの対応は十分に整備されていないと思いますが、相談することは整備が進む契機にもなると思います」

 感染者が入院できず、やむなく自宅で産んだ新生児が死亡するという、痛ましい事例があった。再発を防ぐためにも留意したい。

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