「長崎カジノ」運営事業者審査 落選2社が“出来レース”と県を批判 「中国資本」がネック?

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囁かれる重要土地利用規制法との関連

 実際、メルコに廉潔性の問題はあったのだろうか。IR問題に詳しい専門家が明かす。

「メルコ会長のローレンス・ホーの父親は、マカオのカジノ王ことスタンレー・ホー。マカオマフィアを牛耳っていたとも言われてきた人物です。”過去”が“反社会性”にひっかかるということなのでしょう」

 だが、「それ以前の問題があった」と続ける。

「中国資本であることです。国は巨大な利権が絡むカジノ事業に、中国共産党の影響力が及ぶ企業が参入することを、強く懸念しています。6月に『重要土地利用規制法』が成立し、自衛隊基地周辺で外国資本による土地の買収や利用が規制されるようになりましたが、長崎県がIRの候補地としている佐世保には海上自衛隊の基地がある。このような国の意向が、長崎県の選考に影響した可能性は大きい。オシドリ・コンソーシアムの中核企業であるOshidori International Holdings Inc.も、香港のファンドです」

 とはいえ、選考の項目に「廉潔性」や「外国資本の問題性」がなかったことは確かである。オシドリは取材にこのように回答している。

〈中国資本が問題になったという認識はありません。もし中国資本が問題になっているのであれば、事前に選定者が決まっていた様な非倫理的なRFPプロセスで私たちを隠れ蓑にするのではなく、最初から私たちに伝えるべきだったのではないでしょうか。加えてOshidori Internationalの経営所有者とコンソーシアムに参加している経営所有者の全メンバーは、米国またはカナダの市民です〉

当初「まったく身に覚えがない」と回答した県だが……

 3社しか候補者がいないなか、最終プレゼンテーション前に辞退を迫られた2社がそろって落選。しかも1次審査からの“大逆転”。確かに両社が憤る気持ちもわからなくもない。

 一方、長崎県IR推進課は、「募集要項にのっとり公平公正に審査した」と主張する。13日の取材では、こう答えていた。

「(オシドリがホームページ上に公表した文書について)一方的かつ具体性に欠ける主張で、さっぱり見当がつきません。いまオシドリ・コンソーシアムの代表企業に問い合わせているが、回答がない。プレゼンテーション時にもトラブルめいたことはまったくなく、『頑張ります』と言っておられた」

 だが、オシドリの反論を聞いたうえで、両社に辞退を迫った事実があるかと問うと、急にトーンダウンした。

「いまはまだ公募期間中なので、プロセスの内容について詳しく申し上げることはできません。月末、カジノ・オーストリアと基本提携を締結し、公募プロセスが完了した段階で、県民やマスコミのみなさんに説明させていただきたいと思っています」

 何度、辞退を迫った事実はないかと問うても、否定せず、「後ほどちゃんと説明します」と繰り返すのみ。当初、「まったく思い当たることがない」と言っていた対応がそらぞらしく思えてくるのである。

 もちろん、中国資本が日本のIR事業に参画することへの懸念は考慮されるべきだろう。だが、巨額の利権が絡むカジノ事業の選定が公正公平を欠いて行われていたならば、由々しき事態である。一刻も早い県の説明が求められる。

デイリー新潮取材班

2021年8月24日掲載

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