ロンブー田村淳、最上もがも自称する「HSP」 「繊細さん」ビジネスの危うさ

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エビデンスのない情報が広がってしまった

 HSPは、発達心理学やパーソナリティ心理学の分野で、30年近く研究が蓄積されている。ただ残念なことに、日本で広まった「HSP」は、自己啓発本をルーツにするものであり、学術的なHSPの考え方とはズレがある。端的に言えば、研究知見(エビデンス)にもとづかない情報が多い。この記事では学術的なHSPと区別して、あえて「HSP」をカッコ書きにしている。

 ネットの「HSP診断テスト」もブームに一役買っているようだ。Twitterをみると、ネットの「HSP診断テスト」をもとに自身が「HSP」かどうかを判断している様子が窺える。しかし、この診断テストの項目は、研究で使用されているものではない。どういうことかいえば、これはHSP気質を測定できない可能性が高いということである。それに加え、ネットの診断テストでは、何らかの得点にもとづいて「HSP」かどうかを「診断」してくれるが、その基準に科学的根拠はない。

 こうした状況を憂いて、私は研究者として学術的なHSPの考え方を発信し始めた。世の中で広まった「HSP」の情報について、エビデンスがあるかどうか示すことも始めた。研究にもとづく知見が「HSP」にとって真に役に立つと思うからである。

 しかし、エビデンスにもとづかない「HSP」情報が広く知られた今では、こうした取り組みへの風当たりは強い。「HSP」を名乗る方からしばしば攻撃的なメッセージが送られてくる。内容はこうだ。

「情報が正しくなくても、怪しいビジネスだとしても、それで救われる人がいるのならそれでよいではないか」

「研究者はHSPに正しさを押し付けている」

「あなたはHSPなのか? あなたには共感性があるように思えない」

「HSPの提唱者は素晴らしい。提唱者こそが正しい」

 ある意味「信仰」に近い形で「HSP」を自身のアイデンティティにする方もいる。そうした方が、学術的な考え方に触れると、どうやら自分を否定された気持ちになるようだ。人によってはそれが攻撃につながる。

 こうした批判を受けるたびに、日本で広まった「HSP」とは何なのか、その人にとっての「HSP」とは何なのかを真剣に考えている。

飯村周平(東京大学・日本学術振興会特別研究員PD)。博士(心理学)。思春期・青年期における環境感受性(HSP)の発達心理学的な研究が専門。日本で「HSP」が広まり始めた2019年から、研究にもとづくHSP情報をSNS等で発信。2020年にクラウドファンディングを募って、研究にもとづく信頼できるHSP情報サイト「Japan Sensitivity Research」(japansensitivityresearch.com)を開設。

2021年8月10日掲載

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