W金の阿部兄妹 一二三が成長した裏に「強力ライバル」 詩の武器は「猿の足」

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ピアノより柔道

 阿部兄妹の父・浩二さん(51)は神戸市消防局に勤務する消防士だ。柔道の経験はないが、水泳の国体選手だった運動能力の高い遺伝子を二人に伝授した。厳しい三交代などの勤務の中も、練習が終わる頃、詩のいる夙川学院高校に迎えに来る毎日だった。

 一二三は小学生時代、女の子にもぶん投げられて泣いていたが、逆立ちで道場を歩きまわるなどバランス感覚や運動神経は抜群。浩二さんは消防隊員の訓練などもヒントに、息子とは様々なトレーニングをし、腰の回転力など、基本的な力を身に着けざせていくと一二三はメキメキ力をつけ中学からは全国制覇していく。

 一方、妹の詩について、浩二さんも母の愛さんも女の子らしくピアノを習わせたかったが「詩も柔道やりたい」に抗しきれなかった。しかし次第に兄以上の天性があることもわかったのだ。

 さあ、3年後にはパリ五輪である。兄には代表争いで再び丸山が挑んでくるはずだ。詩のライバル、ブシャールは祖国で「リベンジ」を果たしにくる。それでも詩はパリで連覇した暁には、東京五輪の兄のように感情を押し殺して振る舞うことができるようになるかもしれない。

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」「警察の犯罪」「検察に、殺される」「ルポ 原発難民」など。

デイリー新潮取材班編集

2021年7月28日掲載

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