U-24日本代表が勝利のウラにメキシコの慢心 南ア戦とは違った レフェリー

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数的優位でも失点

 駆け引きの上手いメキシコの選手に対しても毅然とした態度で臨み、後半23分にはGKと1対1になりかけた堂安を押し倒したCBホアン・バスケス(23)を「得点機会阻止」で一発退場にした。

 これがバレンズエラ主審だったら、重大な決断を瞬時に下せずノーホイッスルだったかもしれない。日本はレフェリーも味方につけたと言っていいだろう。

 課題をあげるなら、11人対10人になってメキシコに押し込まれ、FKから失点したことだ。ただし、数的不利なチームが優位に試合を進めることは、サッカーではよくあることでもある。以前、セルジオ越後氏は「数的に不利なチームは、1人の選手が2人の動きを見ようと意識する。カバーする意識がチーム全体に広がり、かえって押し気味に試合を進めることがある」と話していた。

 森保一監督は、後半20分に相馬に代えてFW前田大然(23)を送り込んだ。相馬はメキシコ攻撃陣の中心選手である右MFディエゴ・ライネス(21)を、左SB中山雄太(24)と連係してまったく仕事をさせなかったため、疲労を考慮しつつ、俊足の前田にはカウンターを期待したのだろう。と同時に、初出場で五輪の雰囲気を体感させる狙いもあったに違いない。

2勝1敗でも予選落ち

 後半35分には林に代えて上田綺世(22)、堂安に代えて三笘薫(24)を起用した。いずれも疲労を考慮しつつ、追加点を狙いながら大会の雰囲気に慣れさせようという配慮があったはずだ。

 もしも後半40分に失点していなければ、フランス戦とその先を見越して南ア戦でイエローカードを貰っている遠藤航(28)に代えて旗手怜央(23)を起用したいところだが、1点差とあって森保監督も冒険はできなかったのだろう。

 遠藤に関しては、南ア戦では田中碧(22)が右サイドのオープンスペースやバイタルエリアに顔を出していたが、メキシコ戦では役割をチェンジし、遠藤が推進力のあるドリブルでメキシコ守備陣を混乱させた。フランス戦では2人がどういう役割を果たすのかも見所の1つである。

 最後に、キャプテンの吉田麻也(32)が「まだフランスにもチャンスがある」と言ったように、日本はベスト8進出を決めたわけではない。アトランタ五輪では2勝1敗ながら得失点差で準々決勝進出を逃している。くれぐれも、前車の轍を踏んではならない。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮取材班編集

2021年7月27日掲載

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