なでしこジャパン カナダ戦で露呈した多すぎる不安要素 予選突破のための戦い方は?
カナダに苦戦
「負けなくて良かった」――試合を観戦したファンの誰もが心の底からそう思ったはずだ。
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東京五輪の開会式に先立って行われたサッカー競技の女子、日本対カナダ戦は開始6分に先制点を許す苦しい展開だった。
左サイドのタテパスでニシェル・プリンス(26)に突破を許し、マイナスのクロスをクリスティン・シンクレア(38)がシュート。これは左ポストが阻んだが、右サイドにこぼれるところ、再びシンクレアに押し込まれた。
シンクレアにとっては代表通算187ゴールとなり、男女を通じて代表での通算得点記録を更新した。
シュートを打っても足を止めずに走り込んだところにボールが跳ね返ってくるあたり、運も味方したかもしれない。
突破を許した左SB北村菜々美(21)と控えの宮川麻都(22)は、ともに高い技術はあるものの、小柄で守備力に不安がある。
高倉麻子監督(53)になり若返りを計るのもいいが、五輪とW杯を経験している34歳のベテランDF鮫島彩か、32歳の宇津木瑠美のどちらかを代表にと思わずにいられなかった。
菅澤優衣香では無理
そして問題は、日本の弱点は「スピードのある選手によるフィジカル勝負」であることは2012年のロンドン五輪(銀メダルを獲得)決勝でアメリカに敗れて以来、明白にもかかわらず、有効な対処法を見つけられていないことだ。
初優勝した11年のドイツW杯でも日本はキック・アンド・ラッシュのイングランドに唯一の敗退を喫するなど、過去1勝2分5敗と苦手にしている。
7月14日のオーストラリア戦(1-0)では、前線からのプレスによるコンパクトな守備でスピード勝負を封じていたが、いま考えるとオーストラリアはあえてスピード勝負を封じていたのかもしれない。
もしも日本がグループEを首位で突破すれば、グループGの3位となる可能性が高いオーストラリア(1位と2位はスウェーデンとアメリカが濃厚)と準々決勝で対戦するからだ。
それでも日本は前半20分過ぎから得意のボールポゼッションで試合を支配した。右サイドから清水梨紗(25)と塩越柚歩(23)が攻め込むも、クロスはことごとく跳ね返される。
FWの菅澤優衣香(30)は、アジアでこそ屈強なフィジカルは通用するが、やはり世界相手だと厳しい。
田中美南がPKキッカー!?
ポストプレーはほとんどできず、サイドに流れてパスを受けてもスピードがないため簡単にボールを失っていた。
高倉監督が後半開始と同時に田中美南(27)に交代したのは当然の策と言えたし、残り2試合もスタメンは田中にするべきだ。
そして田中は交代出場してすぐの2分に長谷川唯(24)のアーリークロスに反応してPKを獲得する。
最初に主審は田中のGKステファニー・ラビ(34)へのファウルと判定したが、VARとオン・フィールド・レビューの結果、GKラビの反則として日本にPKが与えられた。
ここで疑問に感じたのは、PKキッカーを田中に任せたことだ。田中は日テレ・ベレーザ時代に4年連続して得点王に輝いている(そんなストライカーを高倉監督は19年のフランスW杯のメンバーに招集しなかった)。
とはいえ、五輪とW杯という国際舞台の経験は今回が初めてだ。いくら自分がPKを獲得したからといって、重圧のかかるキッカーに起用するのは首を傾げざるをえない。
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