なでしこジャパン カナダ戦で露呈した多すぎる不安要素 予選突破のための戦い方は?

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山下杏也加を起用すべき

 オーストラリア戦では長谷川の左クロスからハンドによるPKを獲得し、岩渕真奈(28)がきっちり左スミに決めて決勝点を奪っている。

 0-1のビハインドという「絶対に外せない」状況なのだから、チーム最多の36ゴールを決めている岩渕に蹴らせるべきだった。

 0-1のまま時間ばかりが過ぎていく。後半15分には右クロスをGK池田咲紀子(28)がファンブルしてこぼれ球を押し込まれ、ダメ押しの2点目が決まったかと思われた。

 しかしラインズマンがフラッグを上げていたためVARが入り、オフサイドの判定で日本は救われた。

 GK池田はその後もフィードしようとしたキックをカットされるなど不安定なプレーでピンチを招く。

 足下のプレーには自信があり、ビルドアップしようと試みたのだろうが、カナダ戦のプレーを見る限り、次のイギリス戦のGKは40試合の出場経験を誇る山下杏也加(25)を起用すべきだ。

高倉監督の指示は?

 かくしてゴールの匂いがまったくしない試合で、思い出したのが澤穂希(42)だった。かつての「背番号10」は、苦しくなればなるほど力を発揮した。ドイツW杯での左CKからの同点ゴールは今でも語り草である。

 そんなことを思っていたら、「背番号10」の岩渕が大仕事をやってのけた。この試合で初めてカナダ守備陣の裏をとり、長谷川のタテパスに抜け出すと、バウンドボールにタイミングを合わせてボレーシュート。GKの手の届かない右スミに値千金の同点弾を流し込んだ。

 足下から足下につなぐサッカーはカナダに読まれ、サイドに展開しても複数人に囲まれてボールをロストしていただけに、もっと早くミドルパスやロングパスで相手の背後を突くべきだっただろう。

 最後に気になったのは後半アディショナルタイム8分に高倉監督からどんな指示が出ていたかである。

 このまま1-1のドローで試合を終えるのか。あるいは勝点3を取りにアグレッシブに行くのか。

「なでしこ」の実力

 試合の流れからして前者だと思った。カナダも前線にフレッシュな選手を入れてカウンターを狙っている。

 この試合は勝点1で満足すべき内容と思った。しかし選手たちからは、勝ちに行くのか、守りに入るのか、明確な意図が感じられなかった。

 高倉監督の選手交代を見る限り、メッセージは後者だったのかもしれないが、攻撃が活性化したとは言えず、「失点しなくて良かった」というのが正直な感想だ。

 次のイギリス戦は、前述したように11年のドイツW杯と、19年のフランスW杯で日本からゴールを奪った1トップのエレン・ホワイト(32)、スピードスターの右MFニキータ・パリス(27)らを擁する強敵だ。

 単純だが力強い攻撃に、カナダ戦のような試合開始早々の失点は防がなければならない。特に左サイドは前線からの連動した守備でパリスとホワイトを封じたい。

 苦手な相手だけに、この試合も勝点1を目標に戦った方がいいだろう。そして勝負は第3戦のチリ戦での得失点差の争いに持ち込みたい。それが現時点での、「なでしこジャパン」の実力と見た。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮取材班編集

2021年7月23日掲載

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