新興アパレル大手「アダストリア」が健保組合から脱退宣言 組合を牛耳る旧勢力との対立で法廷闘争も

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「負担が軽く済む」

「グローバルワーク」や「ニコアンド」、「ローリーズファーム」といったブランドを擁し、国内外で1300店舗以上を展開するアダストリア。売上高も業界5位の大手企業が、「東京ニットファッション(KF)健康保険組合」からの脱退を宣言した。いかなる事情があったのか。

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 アダストリアを指折りのアパレル企業に育て上げた福田三千男会長兼社長が、憤然として語る。

「年明け早々、KF健保を相手取り、理事会議事録や財務資料などの情報開示を求める訴訟を東京地裁に起こしました。と同時に、今春をメドにして、KF健保からの“脱退地位確認訴訟”にも踏み切る予定です」

 KF健保は1953年の設立当初、その名の通りにニット製品の製造卸売などを手掛ける業者を中心とした健保組合だったが、年を追うごとに加入する事業者が増えていた。

 アダストリアがKF健保に加入したのは2002年。“若い被保険者が多いから、保険料負担が軽く済む”という誘い文句だったという。同じ時期には、“ユナイテッドアローズ”や“サマンサタバサ”“ビームス”といった新興アパレル企業も続々と加入している。

選定理事

 割に合わない保険料負担を強いられながらメリットを享受できなかった、と福田会長兼社長。

「例えば、KF健保における無料健診の提携医療機関は640カ所ほどで、首都圏に集中している。新興アパレル企業の場合、地方勤務の社員は健診を受けるのに長距離移動を余儀なくされるわけです」

 こうしたシステム面に加え、KF健保設立初期のメンバーである「選定理事」が組織を牛耳っている状態やKF健保職員の報酬額などにも不満を募らせた福田会長兼社長は、17年6月、脱退の決意を固めた。

 しかし、KF健保の理事会で脱退は否決される。その後も1年ごとに脱退を申し入れてきたが受け入れられず、結局、法廷闘争での決着を選択せざるをえなくなったという。

 KF健保としても、保険料収入の1割を占めるアダストリアが脱退すれば存続の危機に陥る。双方譲らずの法廷闘争が展開されそうだ。

週刊新潮」2021年2月25日号「MONEY」欄の有料版では、法廷闘争に至るまでの経緯を詳報する。

週刊新潮 2021年2月25日号掲載

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