【東京五輪】女子ソフトボール日本代表 メンバー発表で誰もが驚きと戸惑いの声を上げた理由

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なぜ捕手が3人も選ばれたのか?

 捕手が投手と同数というのは、野球の代表チームでも珍しい。なぜ宇津木監督はこのような常識を超えた選択をしたのか? 背景には試合方式の変更がある。かつてオリンピックでは、グループリーグの後、敗者復活もある独特の決勝トーナメントで順位を決定していた。そのため終盤にダブルヘッダーが組まるなど苛酷な日程を課せられた。ところが、今大会は参加チームが10から6に減った上、グループリーグの1位と2位がそのまま決勝に進出し、優勝を争う方式に変わった。つまり、最大10試合だったものが、最大6試合に減ったのだ。そのため、宇津木監督は2本柱を回せば行けると判断したのだろう。

 そしてもうひとつ。この1年の大きな変化も影響している。昨今のスポーツ界は、過剰なほどデータ勝負に支配されている。ことに、野球やソフトボールのようにデータを収集し分析しやすい競技では、データ分析の優劣がそのまま勝負に影響すると理解されている。ところが、コロナ禍で国際大会も予定どおりできなかった。つまり、集めるべきデータが十分に集まっていない。そこで重要なのが、本来の機能。捕手の頭脳(インサイドワーク)だ。データに頼るのでなく、初見で打者の癖を見抜き、意図を感じ、翻弄するための配球を投手に要求しなければならない。

 一番手の捕手と目される我妻悠香(はるか)26歳、清原奈侑(なゆ)30歳、北京五輪代表でもあった峰幸代、33歳はいずれもインサイドワークに長けている。中でも伏兵的な期待を担っているのは清原ではないか。清原は発想が独特で、意表をついたリードをすることで定評がある。2本柱が、同じ捕手のリードでパターン化すれば大会中のデータ分析によって打ち込まれる可能性もある。だが、データを混乱させる常識外れの配球が間にはさまれば、相手チームに的を絞らせない効果が期待できる。

 問題は、独特のリードを上野、藤田が楽しんで、従来とは違うピッチングに目覚めるかどうか。清原とのバッテリーで新たな化学反応が起これば、日本がここ数年、国際大会では一日の長があるアメリカを破る期待もふくらむだろう。

小林信也(こばやし・のぶや)
1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。「ナンバー」編集部等を経て独立。『長島茂雄 夢をかなえたホームラン』『高校野球が危ない!』など著書多数。

デイリー新潮取材班編集

2021年7月21日掲載

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