佐村河内守が初告白「鬱々としんどい日々……」、騒動から7年 YouTubeでの作曲活動も再開

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 ゴーストライター騒動から、およそ7年。佐村河内守氏(57)は昨年秋、YouTubeを舞台に作曲家としての活動を再開していた。楽曲制作への思いや、騒動後の日々について、初めて本人が語った。

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『交響曲第1番“HIROSHIMA”』などの楽曲を生み出し、「NHKスペシャル」を始め、数々の番組で「全聾の天才作曲家」として取り上げられた佐村河内氏。「現代のヴェートベン」と称された彼が、一転、稀代のペテン師として世間から大バッシングを受けることになったのは、作曲家の新垣隆氏(50)が彼に成り代わって作曲を行っていたことを告白した2014年2月のことであった。

 佐村河内氏は会見を開き、一連のゴーストライター騒動を謝罪。その後、数々のバラエティ番組に出演した新垣氏とは対照的に、およそ7年間、ほとんどメディアにも登場しなかった。

 そうした中、佐村河内氏は2018年頃から人知れず作曲活動を再開し、2020年10月からはYouTubeに楽曲を発表し始めた。「MALLEVS MALEFICARVM」というチャンネル名は、1487年に出版された『MALLEVS MALEFICARVM(魔女に与える鉄槌)』という書物にちなんでいるという。これは、15世紀以降、異端者と見なされた多くの女性が拷問の末に殺害されることになった、いわゆる魔女狩りの手引書として使われたものである。

「この本は、聖書を上回り、世界で最も売れた書とも言われています。私の音楽のコンセプトである荒廃した近未来世界の中でも、同調圧力による魔女狩りが横行します。それに立ち向かう象徴として生み出した“Sakura”をテーマにした楽曲を作ったのです」(佐村河内氏)

 今年4月にYouTubeに公開された『MM“Sakura”Apocalypse』の再生回数は、5.3万回を超えた(7月16日現在)。

 この曲を聞いた“ゴーストライター”の新垣氏は、「言えるのは、この作品は約二十年前に彼がベースを作り、私が“お化粧を施して”仕上げた『鬼武者』というゲーム音楽から、化粧部分を取り去ったものと瓜二つだということです。だからこそ、彼のオリジナルだと分かるのです」(『週刊文春』2020年8月13・20日号)と語っている。新垣氏からもオリジナルのお墨付きを得たこの曲は、再出発した佐村河内氏の新たな代表曲ということか。

「代表曲なのかははっきりとは分かりませんが……。1994年に初めて放送されたNHKの『山河憧憬(武蔵野)』の音楽を担当していた頃には、既に能楽、尺八、効果音、オケ、電子音楽の融合という『MM ‘‘Sakura’’ Apocalypse』と全く同じオリジナルスタイルで作曲しておりました。私は、DTM(デスクトップミュージック)の草創期を生きていたわけですが、当時はまだ和楽器とオケと電子音楽といった斬新な融合は認められない時代でした。『こんなヘンテコな融合曲とか、頭大丈夫?』と売り込み先に門前払いをされる日々だったことを懐かしく思い出します。27年前の楽曲と今年になって発表した楽曲が能楽、オケ、電子音楽の融合と全く同じスタイルということから、自分の進歩の無さを反省しつつ、これが私のオリジナリティなのだろうと感じております」(同)

反戦のメッセージ

 騒動後、佐村河内氏は、自伝の中で語った幼少期に受けた音楽教育や生い立ちについても、大半が嘘であったことを認めた。そのため、被爆2世という点にも疑惑が向けられ、バッシングが強まる要因になった。それでも、騒動前から現在に至るまで、楽曲に込めるメッセージは一貫しているという。

「テーマは、昔からブレることなく反戦です。MMシリーズではパラドックス的な手法を使い、“Sakura”を近未来からのメッセンジャーとしました。近未来に起きた悲劇を“Sakura”の物語を通して描くことで、“Sakura”から見た過去である現代の我々が『“Sakura”のいる世界は嫌だな、悲しい世界、戦争は嫌だ、こんなことが起こると世界はコロナのように、いや、それ以上に酷く悲しい世界になる、何もないことは実はとても良いことなのでは……』と少しでも感じて頂ければ本望です。音楽形態を少しずつ変えながらMMシリーズを続けてゆけたら、と願っております」(同)

 こうして昨年秋、佐村河内氏は作曲家としての活動再開の場として、YouTubeを選んだのだ。

「騒動以降、信頼を失っておりましたので、新曲を制作してもCD化や配信販売のお話しは頂けませんでした。ただ、自分にとってCD化や配信販売をすることとYouTubeで楽曲発表することは何の差もありませんでした。その上、騒動当時の誹謗中傷の嵐からして、名を明かして純粋に音楽を楽しんでもらうことは難しいと考え、匿名でのYouTube投稿という形を取ることにしました」(同)

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