大谷翔平、最大の敵は“デッドボール” 「被死球率」をMLB本塁打王と比較すると──

スポーツ 野球

  • ブックマーク

Advertisement

世界一の“被死球頻度”

 一方、「50打席に1回」デットボールをぶつけられる選手は「被死球王」の仲間入りを果たすようだ。日米5人の平均は前者が「50・1」で、後者が「42・6」。こちらもプロ野球とメジャーの間に明確な差はなかった。

 それにしても、やはり日ハム時代の大谷が「292・5打席に1回」しかデットボールを当てられなかったというのは相当に少ない。

 プロ野球の「被死球王」は清原和博(53)と竹之内雅史(76)だ。前者は通算ホームラン数が525本で第5位にランクインしているが、被死球の頻度は「48・1打席に1回」。日ハム時代の大谷と比べると6倍という高確率だ。

 ちなみに竹之内に至っては「29・4打数に1回」という驚くべき数字だ。アメリカの死球王でも、これだけの確率でデットボールを当てられた選手はいない。

 先に見たとおり、エンジェルスの大谷は被死球率が上昇している。とはいえ、「184・1打席に1回」という数字はまだまだ高くない。

 メジャーのホームラン王10人の平均値は「119・0打席に1回」。生涯本塁打数1位のバリー・ボンズ(56)は「118・9打席に1回」であり、4位のアレックス・ロドリゲス(45)に至っては「69・4打席に1回」だ。

コントロール問題

 Aロッドの被死球頻度は清原よりは低いものの、衣笠祥雄(1947〜2018)の「66打席に1回」とほぼ同率になっている。衣笠の通算被死球数は161回で、3位にランクインしている。

 果たして、メジャーの投手も大谷に気兼ねしているのだろうか。日本人メジャーのパイオニアである村上雅則氏は「メジャーの大谷くんに死球が当たる確率は、日本より高くなるのは間違いありません」と断言する。

「大谷くんに気兼ねするとか忖度するとか、そういう問題ではありません。プロ野球の日本人投手に比べ、メジャーリーグの投手はコントロールがよくないのです。それを綺麗に表現すれば『荒れ球で打者を打ち取る』タイプのピッチャーが多いということになります。大谷くんの内角を攻めようとして当ててしまうというケースは、今後ますます増えていくと思います」

 かつて日本のプロ野球には「ドラフト1位の新人には必ずデットボールをお見舞いする」と言われた金田正一(1933〜2019)や、死球を与えても全く動じない態度から「ケンカ投法」の異名を与えられた東尾修(71)といった“武闘派”の投手も多かった。

「ナイスガイ」と死球

 日本ではめっきり見なくなったタイプの投手だが、さすがにメジャーリーグでは未だに少なくないという。

「アレックス・ロドリゲスの通算被死球数は176回で、これはメジャーのランキングでは歴代14位になっています。故意に当てられていたと疑われても仕方ないでしょう。彼は2009年から薬物使用疑惑が浮上し、一度は限定的に認めましたが、その後も新たな疑惑が噴出し続けました。多くの投手が彼の言動を疑問視していたはずです。『当たっても構わない』と闘志を燃やし、内角ギリギリに勝負を挑んだ結果ではないでしょうか」(同・村上氏)

 一方の大谷は「ナイスガイ」と評判だ。これは被死球率を下げる可能性があるという。

「彼の礼儀正しさは、既に全米のスポーツニュースでも報じられています。『この野郎、当ててやれ』とケンカを売られることは非常に少ないでしょう」(同・村上氏)

 それよりもチーム成績のほうが影響を与えるという。7月6日現在、エンゼルスはア・リーグ西地区の4位。1位のアストロズには9・5ゲームも離されている。

「今年のエンゼルスは投手以外なら悪くないのです。新人が活躍するなどチームに活気があります。メジャーリーグの場合は7月31日までトレードが可能です。エンゼルスはお金を持っているほうの球団になります。もし投手陣の補強に成功すれば、後半戦で上位に食い込んでもおかしくありません。そうすると厳しい戦いが続くことになり、優勝を競る相手の投手も攻め込んできます。大谷くんがデットボールを食らう可能性は上がるわけです」(同・村上氏)

熾烈な「死球王」争い!?

 大谷がホームランを放った場面を見ていると、内角の難しい球でも鮮やかにスタンドへ運んでいる。今さら投手が内角を攻める必要はない気もするのだが……。

「確かに今年の大谷くんは外角のチェンジアップ、それもボールとストライクすれすれの球を苦手にしているような印象を受けています。とはいえ、投球は内角と外角の出し入れで成り立つものです。外角ばかり投げていたら、さすがに大谷くんは打ちます。また、同じコースだけに投げるのは、逆に難しいのです。内角を投げて、一球外して、外角で勝負、と組み立てる必要があります。決め球の外角を活かすために内角を狙ったら、ボール1個分が外れて大谷くんの身体に当たってしまった、というのが最も多い死球のパターンになるでしょう」(同・村上氏)

 アメリカンリーグの本塁打ランキングでは7月10日現在、33本の大谷がトップ。2位がウラジーミル・ゲレロ・ジュニア(22)で28本。3位がジョーイ・ギャロ(27)で23本だ。

 このゲレロとギャロの被死球率を調べてみると、こちらも非常に興味深い。ゲレロの頻度は「139・4打席に1回」と平均的な数字なのだが、ギャロが「91・3打席に1回」と、やや高めなのだ。

 3人の本塁打王争いだけでなく、誰が死球に泣かされるのかを注目しながら見るのも面白そうだ。

デイリー新潮取材班

2021年7月11日掲載

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。