戸田恵梨香&永野芽郁がお巡りさんに… 「ハコヅメ」に詰め込まれたヒットの要素

エンタメ 芸能 2021年7月7日掲載

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 日本テレビの水曜午後10時台の新連続ドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」が7月7日にスタートする。この放送枠は最近、視聴率に恵まれない。「ハケンの品格」(昨年6月~8月)の後続ドラマは全話平均の世帯視聴率が10%を超えていない。世帯の数字と連動する個人全体の視聴率も頭打ち。新ドラマが救世主となるか。

「ハコヅメ」の出演陣は豪華版。主演は戸田恵梨香(32)。TBS「大恋愛」(2018年)などの主演作を当て続けている女優なのは説明するまでもない。NHK連続テレビ小説「スカーレット」(2019年度下期)のヒロインも務めた。

 昨年12月に松坂桃李(32)と結婚したが、人気に陰りは見えない。女性性を売り物にするタイプの人ではないからだろう。

 もう1人の主演は永野芽郁(21)。橋本環奈(22)に次ぎ、「高校生が好きな女優」ランキングで2位なのだそうだ(INGTeens調べ)。CM界での人気も高く、9社と契約中。深田恭子(38)、多部未華子(32)と一緒に登場するUQモバイルを始め、アサヒ飲料、味の素、花王、コーセーなどの顔を務めている。また、こちらも朝ドラ「半分、青い。」(2018年度上期)でヒロインを務めている。

 ほかにも三浦翔平(33)、山田裕貴(30)、ムロツヨシ(45)と主演級がズラリ。山田は大阪のMBSが制作した主演作「ホームルーム」(2020年)が、リアルタイムでは東京で放送されなかったにも関わらず、全国的に話題になった。

 物語にも当たる要素が詰め込まれている。まずは世界中のドラマ界で人気の警察モノである。舞台は交番と刑事課捜査1係。毎回、事件が起きる。原作は元警察官の泰三子さんが「モーニング」で連載中の漫画。単行本の累計発行部数が140万部に達している大ヒット作だ。

 ホンモノだった人が原作者なので、内容はリアル。また永野が演じる新人制服警察官の成長物語にもなっているが、成長モノも視聴者ウケが良いのはご存じの通りだ。戸田と永野のバディ物語でもあり、やはりドラマとは親和性が高い。さらに作風はコミカルになるというから、見やすいだろう。

 良いことずくめのようだが、当たるかどうかは実際に始まらないと分からない。この放送枠の前作が石原さとみ(34)と綾野剛(39)の「恋はDeepに」で、やはり前評判は高かったが、視聴率は世帯、個人全体ともに恵まれなかった。

 6月9日に放送された「恋はDeepに」の最終回視聴率の世帯は8.1%。個人全体は4.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。ちなみに同じ週の6月13日に放送された「ドラゴン桜」(TBS)は世帯14.6%、個人全体9.3%だった。

 もっとも、一部にあったこのドラマの打ち切り報道は間違いだ。そんなことは日テレ関係者も出演陣の所属事務所関係者も誰一人として認めていない。なにより、そこまで酷い視聴率だったわけではない。

 こっそり打ち切ったと考える人もいるかも知れないが、そんなことは不可能。全スポンサー、全ネット局に説明し、了解を得なくてはならないからである。第一、この程度の視聴率で打ち切ったら、代わりの番組の用意などのコストのほうが高くなってしまう。

 通常より1週早く終了し、本来は最終回の放送枠で特別編を流したから、打ち切りという憶測が生まれたのだろう。第一、録画視聴分も含めた総合視聴率は世帯で14.6%、個人で7.9%あり、まったく打ち切られるレベルではない。

 ダウンタウンの松本人志(57)の発言でクローズアップされたコア視聴率(日テレは13歳~49歳)内での競争なら、「恋はDeepに」の相対的順位はさらに上昇する。だが、それは民放ビジネスの話に過ぎず、視聴者側には無関係の話だ。

 そもそも日テレ自身も個人視聴率全体での3冠王を獲得すれば公表するが、コアでの3冠王等を視聴者に向けて公言したことはない。コアの視聴率は放送記者に限定した社長会見や放送専門誌向けの会見、IR資料等でしか明かしていない。内輪の数字なのである。

 コア視聴率の3冠王の発表を視聴者に向けてするようになったら、「20代に一番人気のある商品です」などと喧伝するコスメやサプリと同じになってしまう。「10代に人気ナンバーワンの番組です」「30代女性では1位」などと各局がPRし始めたら、視聴者は渋面になるはずだ。

 半面、日テレの本音としては、恋を中心にしたドラマが続いたここ1年の水曜午後10時台は、コア層に見てもらいたかったのだろう。

 もっとも、国民共有の財産である公共の電波を使っているので、そう公言するのは無理。日テレと松本では立場が違う。また、また、非コア層も見てくれないと個人全体の3冠王は獲れないのである。

 「恋はDeepに」は批判の声が少なくなかったが、それもこのドラマがコア層をメーンターゲットにして作られていたことが大きな理由にほかならない。

 日本の人口約1億2600万人のうち、コア世代の49歳以下の人口は約6500万人。だが非コア層である50歳以上の人も約6000万人いる。非コア層が「面白くない」と思い、声を上げたら、それは大きなものになる。

 1990年代はF1層(20~34歳の女性)狙いのドラマがよくつくられたが、当時は超大物脚本家すら「くだらない」と痛烈に批判した。ターゲットの年齢層を絞ると、それ以外の層の人には陳腐に映るのである。

 一方、「ハコヅメ」は間口を広くしてある。非コア層も含めた個人全体を意識しているのだろう。高校生など若者に人気の永野を主演に配した一方で、幅広い世代に支持されている戸田も主演に。また戸田とプライベートでも親しいムロも支持層の広い役者だ。

 ストーリーもそう。初回で永野が演じる交番勤務の新人警官・川井麻依は、辞職願を出そうとする。「警察官になったら一生安泰」と甘く考えていたが、心身ともにキツかったからである。若い世代にとっては「ある、ある!」ではないか。

 その矢先、刑事課のエースだった藤聖子(戸田)が同じ交番にやってくる。左遷だった。パワハラが問題になったらしい。今度は中高年以上が「ある、ある……」だろう。藤がやって来たことにより、川井は辞表を出しそびれる。そして藤の能力とパワーに圧倒される。

 未だかつてない、お巡りさんの日常を描く交番エンターテインメントになる、という。

 本当に「未だかつてない」ものになるかどうかは見てみないと分からない。だが、この1年間に同じ放送枠で流された「恋はDeepに」「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(1月期)「#リモラブ~普通の恋は邪道~」(昨年10月期)「私たちはどうかしている」(同8月~9月)とは随分と毛色が異なるものになるだろう。

 それが吉と出るか凶と出るか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮取材班編集