上皇さま、ハゼ2種類を発見の“スゴさ” 現役研究者は「驚きと深い尊敬の念」

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 退位後初めて発表された論文の中で、上皇陛下(87)が新種のハゼ2種を発見したことが明らかになった。公務の傍ら長年ハゼの研究を続け、さらに87歳を超えて新種まで発見するとは驚きだ。ハゼの研究をする「ふじのくに地球環境史ミュージアム」の渋川浩一氏に、上皇陛下の“スゴさ”を解説してもらった。

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 魚類分類学を専門とし、ハゼを中心に研究している渋川氏は、上皇陛下の論文を読んでどのような感想を持ったのか。

「この論文は、今も上皇さまが魚類分類研究分野の第一線でご活躍されていることを世に示すものです。そして今回の論文発表が、いまだ分類学的問題が残るオキナワハゼ属(Callogobius)の種多様性解明に向けて、さらに一歩、状況を大きく前進させたことは間違いありません」(渋川氏)

 この論文の中で発表された2種類のハゼの和名は、上皇陛下によって「セボシフタスジハゼ」「アワユキフタスジハゼ」と命名された。

「体や鰭(ひれ)の色模様の特徴にちなんで、『アワユキ』や『セボシ』と名付けられました。ただし、見た目の特徴だけで種を区別するわけではありません。鰭(ひれ)の形状や鱗の数、頭にある感覚器官の特徴などもまた重要な要素です」(同)

なぜ英語版?

 日本魚類学会の英文誌オンライン版(5月20日付)に掲載された今回の論文は、英語で書かれている。どうして英語なのか、という素朴な疑問が浮かぶ。

「そもそも魚類学は自然科学研究の一分野であり、知見の多くは、国に関わらず人類にとっての共有財産となるものです。つまり、日本国内でのみ行われるものではないのです。そのため、研究方面で使用人口の多い英語で書かれた論文であれば、日本語で書かれた場合よりはるかに多くの方の目に留まり、理解され、有効に活用されることが期待できます」(同)

 さらに渋川氏は、新種を発表する論文であったからこそ、英語で発表することの意味が尚更大きいと指摘する。

「例えば、私たち現生人類の分類学上の和名は『ヒト』で、学名は『Homo sapiens』です。和名は日本語の名前であり、『ヒト』と言っても日本国内でしか通じません、一方、学名は、世界共通の生物の学術的名称です。アメリカでも中国でもインドでも南アフリカでも……地球上どこであっても、『Homo sapiens』といえば、私たち現生人類のことを指すのだと理解してもらえるのです。新種とは、この学名が従来つけられておらず、新たに命名された生物種のことです。世界共通の名称を新たに発表するのですから、日本人しか読めない日本語で論文を書いても仕方がないのです」(同)

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