広島「堂林翔太」も余剰戦力に…活発化するトレード、次の“狙い目”を探る!

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 ロッテはリリーフ陣と捕手陣の強化、DeNAは先発投手の整備、中日とソフトバンクは得点力不足の打線へのテコ入れというトレードの狙いがよく分かるものだ。セ・リーグは上位3球団、パ・リーグは上位5球団までのゲーム差がまだまだ小さいだけに、優勝やAクラスを狙うチームが、ここから動くことも十分に考えられる。そこで、今回はトレードの狙い目となりそうな選手について探ってみたい。

リリーフタイプで狙い目は……

 夏場以降は投手が苦しくなくってくるケースが多いが、そんな中で面白い存在となるのが佐藤優(中日)だ。2018年は抑えも任せられるなど、42試合に登板して5セーブ、10ホールド、防御率2.08という見事な成績を残している。

 翌年以降は成績を落とし、今年もキャンプ中の怪我で出遅れたものの、二軍ではここまで安定したピッチングを見せている。リリーフでの起用がメインとなっているが、先発を経験しているのも強みだ。

 中日はBクラスに沈んでいるものの、投手陣は先発、リリーフともに他球団に比べて安定しており、佐藤は二軍で結果を残しても、なかなか一軍に呼ばれない状況が続いている。先発もリリーフも層の薄さが目立つ西武などには、非常に魅力的な存在と言えるだろう。

 充実した投手陣を誇るがゆえになかなか出番が回ってこない選手が多い球団といえば、ソフトバンクがまず思い浮かぶが、リリーフタイプで狙い目になるのが奥村政稔だ。

 2018年のドラフト7位で指名され、大学、社会人を経て26歳で入団した奥村。年齢を考えても即戦力としての期待が大きかったが、ここまで分厚い投手陣に阻まれて二軍暮らしが続いている。少し制球に不安定なところはあるものの、150キロに迫るストレートには力があり、長く社会人でプレーしてきただけに投球術に長けている。

 ソフトバンクは若手に奥村と同じタイプの右の本格派投手が多く、今年で29歳という年齢を考えても抜擢しづらい状況といえるが、ブルペン陣が手薄な球団にいけば中継ぎとして活躍する可能性は十分にある。開幕時点でクローザーだった石山泰稚が調子を落とし、リリーフでフル回転していた近藤弘樹も故障で離脱したヤクルトは、ぜひとも狙いたい選手である。

貴重な右の強打者

 一方、下位に沈む球団の野手で、余剰戦力となりつつあるのが堂林翔太(広島)だ。昨年は開幕から4割を超える打率をマークするなど、プロ入り11年目にしてキャリアハイと言える数字を残す活躍を見せたが、今年はここまで打率1割台と再び低迷。サードは売り出し中の若手である林晃汰の起用が増え、ファーストと外野も、本来は捕手である坂倉将吾と中村奨成が出場することもあって、ベンチを温める日が続いている。

 しかし、貴重な右の強打者タイプであり、脚力も備えていることから他球団にとっては、まだまだ需要の高い選手であることは間違いない。決して高い守備力というわけではないが、多くのポジションを守った経験があるというのも武器だ。スタメンに左打者が並ぶことが多い楽天やロッテなどは、野手陣の底上げを図る意味で獲得を検討しても面白いだろう。

 堂林と同じ右の強打者タイプでは、伊藤裕季也(DeNA)も余剰戦力になりつつある選手のひとりだ。ドラフト2位での入団で、今年でプロ入り3年目ということを考えれば、現時点でトレード要員となることは考えづらいが、チームは投手陣が苦しいだけに、交換相手によってはDeNAも検討する可能性はありそうだ。

 今年は東京五輪によるシーズン中断の影響もあって、トレード期間も例年より1カ月長い8月末までとなっている。中断期間に戦力の見直しを行い、ここから動く球団も必ず出てくるはずだ。昨年はロッテが、シーズン途中で巨人から沢村拓一(現レッドソックス)を獲得してブルペン陣の補強に成功した。今年も同じような事例が出てくることも十分に期待できるだろう。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年7月4日掲載

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