カトパン夫「ロピア」で注目 スマホ決済を敬遠する「スーパーマーケット」事情

ビジネス 企業・業界

  • ブックマーク

Advertisement

 加藤綾子アナウンサーの結婚相手は、神奈川県を中心に展開するスーパーマーケット「ロピア」を運営する企業社長だった。その特長が解説される際、“年商2000億円”と共に“支払いは基本的に現金のみ”という点も注目を集めた。キャッシュレス決済を敬遠するスーパーマーケットは、実は少なくない。

 ***

 スーパーの決済方法をめぐっては、関東地方を中心に120店舗を構える「オーケー」が、7月1日から会員割引の対象からスマホ決済を除外することも波紋を広げている。〈スマホ決済各社の加盟店手数料が順次有料化される〉ことを理由に、会員向けの3%割引サービスの適用対象を、現金払いのみとするのだ。

 スマホ決済のうち、これまでPayPayとLINE Payは、店側が負担する決済手数料が無料だった。ところが今年の10月からはともに有料に。PayPayは8月末に詳細を発表予定で、すでに明らかにされたLINE Payの手数料は2.45%(税別)。クレジットカード利用時の小売業の手数料は3~5%とされているから、10月からはスマホ決済もクレカと同水準になりそうだ。

 スマホ決済でお得に買い物をしていたユーザーからは〈手数料有料化の波、さっそくOKストアで超絶改悪きた〉(Twitterより)なんて悲鳴も聞こえてくるこの変更。だが冒頭で触れたロピアほか、神奈川県を中心に十数店舗を展開するエイヴイなど、そもそも現金払いのみというスーパーはある(ロピアの一部店舗ではスマホ決済可能)。一方、サミットやマルエツといったスーパーでは7月以降も引き続きスマホ決済は続けられる見込みだが、こうした違いはどこにあるのだろうか。

「オーケーやロピア、エイヴイといったスーパーマーケットは『EDLP』と呼ばれる販売手法をとっています。エブリデー・ロープライス、つまり『毎日安売り』ということで、一般的なスーパーのような特売を行いません。毎日安売りを実現するためには、店側は徹底的なコストカットをする必要がある。手数料が高くなるスマホ決済やクレジットカードは敬遠されるのです」

 と解説するのは、流通アナリストの渡辺広明氏だ。

「コウズ」というスーパーを知っているか

 EDLPは、米スーパー・ウォルマートが得意とした販売手法。渡辺氏によると、日本では1992年から02年までダイエーが運営していた「コウズ」がその先駆け的存在だという。

「『コウズ』の由来、当時のダイエーの会長兼社長・中内功氏の『功』から。年会費を払って利用する会員制スーパーだったので、正確にはEDLPスーパーとは異なり、どちらかといえばコストコにちかい。とはいえ、日本においてかなり早く『毎日安売り』を標榜した小売店であることは間違いありません。コウズは時代を先取りし過ぎましたね。現在とは違って、まだ専業主婦の方が多くいた90年代では、チラシを中心にスーパーごとの値段を見比べて買い物する余裕が各家庭にあり、『毎日安売り』にそこまで旨味がなかった。裏をかえせば、共働き家庭が多く、安売り情報を吟味する時間がとれない今だからこそ、EDLPが受け入れられているともいえるでしょう」

 一般のスーパーとは異なる戦略をとるEDLPスーパー。その特長は店内の光景からも見て取れる。

「最もEDLPを徹底していると感じるのが、エイヴイです。店に入るとまず驚かされるのが、売り場の棚がスカスカということ。商品がなくなっても頻繁には補充しないのです。また、誤解を恐れずにいえば、他のスーパーに比べて床が汚い。どちらも従業員を効率的に動かして人件費を浮かし、安売りを実現させるための策です。スーパーでよく見る“おすすめ品”のようなポップもなく“バーコードを集めて応募”的なキャンペーン葉書も売り場に置かれていない。一見すると、店内は化学工場のように無機質です。ここまで徹底しているのはエイヴイくらいですが、光熱費を削るためペットボトル飲料を冷やさず売っていたり、出荷段ボールをそのまま売り場に置いていたりと、普通のスーパーではまずありえない光景がEDLPにはありますね」

「毎日安売り」を実現するためには、決済手数料だけでなく、仕入れ費用や、家賃、チラシなど広告宣伝費や光熱費、従業員の給料などの「販売費及び一般管理費(販管費)」をいかに抑えるかがカギとなる。

 一般的なスーパーマーケットの場合、売り上げに占める販管費(販管費率)20%ほどとされる。これがオーケーの場合は15.5%、ロピアも17%ほどとされているから、EDLPスーパーの企業努力のほどがよくわかる。(ともに20年度上半期、『激流』21年5月号より)。

「全国スーパーマーケット協会が発表している『カテゴリー別の売上比率』を見てみると、青果が16.2%、水産が11.3%、畜産が13.7%と、生鮮3品で41.2%を占めています。一般食品は値付けにメーカーの事情が大きく介在してきます。大量に仕入れないと納入価格は下がりづらく、販促費も得にくい。それを考えると、スーパーでは生鮮が生命線であるといえます。コンビニやドラッグストアといったライバルの小売業の存在を鑑みても、いかに生鮮でお客さんを呼べるかが鍵であるわけです」

 ロピアのルーツは精肉店で、エイヴイの親会社「ヤオコー」もはじまりは青果商。生鮮食品に“強い”ルートを持っているかどうかも、EDLP戦略をとれる要素のひとつといえるかもしれない。

次ページ:実際の値段はどうなのか

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。