A.B.C-Zの河合郁人の大ブレイク ジャニーズモノマネをする異色のジャニーズが生まれた理由

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後輩のバックで踊ることもある

 現在は5人組のA.B.C-Zだが、前身となるA.B.C.ができたのは2000年で、いわゆる正統派の美少年である橋本良亮が加入したのが2008年。「もともとセンターになりたかった」河合は、橋本の加入に疑問を感じたというが「自分の顔をもう1回見たときに『ああ、俺はセンターの顔じゃないな、やっぱり違うんだな』」と思ったという(「ダ・ヴィンチ」2016年4月号)。

 とはいえ、河合のデビュー時点でのメンバーカラーは赤。ジャニーズに限らず、アイドルグループではセンターを務める人物が担当することの多い色だ。だが、途中で紫に変更。
 デビュー5周年の年にも「俺が赤だったんだよ。でもそのあと紫になったから、多分『こいつは赤じゃねえな』って判断されたんだろうね(笑)」(「日経エンタテインメント」2017年3月号)と語るくらいなので、だいぶ引きずっているようだ。

 このように、初期の河合は、自分が目指すイメージと他人が期待するイメージとの差に戸惑い、折り合いがついていなかったように見える。

 2017年には「最近、僕って意外といじられキャラなのかもしれないと気づいたんです」(「anan」2017年2月8日号)と語っているが、意外でもなければ、「遅すぎるよ……!」とつっこみたくもなる。

 だが、その他人が期待するものと、自分が目指したいものとの“調整”に時間がかかるのも頷ける。河合は「ジャニーズ大好きジャニーズ」だ。ジャニーズに憧れて、自らの意思でジャニーズに入所している。家では少年隊やSMAPの曲が流れていて、本人は木村拓哉に憧れて、8歳で自分で曲を作って歌い、小学校ではユニットを作って自分がセンターに立っていたという(「Myojo」2013年7月号)。

 そんな少年がジャニーズに入れたのだから、目指すは王道のジャニーズになるはずだ。「いつかは木村拓哉さんみたいになれる」とも思っていた(「サンケイスポーツ」2021年3月6日)。

 しかし、河合がメンバーになったA.B.Cはそもそもが“アクロバットボーイズクラブ”の略であり、バックダンサーとしての活動が多かった。しかも先輩だけではなく、後輩のバックで踊ることもある。

ひたすら喋り続ける河合

 そのスキルは「職人」と言われることもあったが「職人って言われるのわかるけど、どっかでイヤだったんですよ。“俺たちはアイドルだ!”って」(「Myojo」2013年7月号)と王道のアイドルロードを歩けていないことに葛藤を感じていたようだ。
「スキルには自信があったけど、便利屋みたいだなって思ってたな。あっちこっちライブに呼ばれて、仕事は途切れなかったけど、このままじゃバックで終わるぞって」(「ダ・ヴィンチ」2016年4月号)と振り返る。

 2007年には、メンバー全員が平成生まれで、河合の後輩にあたるHey! Say! JUMPがデビュー。活躍する彼らに対し「ずっとHey! Say! JUMPのメンバーは俺たちのことバカにしてんのかもしんないと思ってた」(「Myojo」2013年7月号)と卑屈になることもあった。

 さらにその4年後、ジャニーズ事務所史上最年少の平均年齢14.4歳、Sexy Zoneという王道のグループがデビューした。河合としては、入所1年以内のメンバーもいたこの後輩グループに、大きく先を越されたかたちになる。その前には同世代のKis-My-Ft2もデビューしており、焦りも大きかったはずだ。Sexy Zoneのデビュー会見を、当時骨折していたため病院のベッドで見ていたという河合は、のちに「初めて浴槽で泣きました」とも告白している(日本テレビ「PON!」2018年7月4日放送)。

 だが、筆者には忘れられない光景がある。2011年11月。お台場でおこなわれたSexy Zoneのデビュー記念握手会は、多くのファンが集まり、長蛇の列をなしていた。Sexy Zoneと握手できるそのタイミングを心待ちにし、長時間待ち続けるファンたち。

 しかし、その会場に響き渡っていたのは、河合の声だった。待ち続けるファンを盛り上げるため、河合はトークをし続けていたのである。自分より先にデビューした後輩の応援として、ひたすら喋り続ける河合。他のジャニーズタレントに“トークで光を当てる”という、今テレビでやっている行為をこの日も全力でやっていた。悔しさはきっと存在するはずなのに、後輩のデビューに全力で華を添えようとする彼にも、光が差し込んで欲しい……そう心から感じた瞬間だった。

 A.B.C-Zが晴れてデビューするのは、その約3ヶ月後のことである。
 光は彼に差し込んだのだろうか。いや、周囲に光をあてられるのは、彼自身が光っているからなのかもしれない。

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