U-24、ジャマイカ戦に快勝 1年前に考えられなかったメダルも

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「個の強さ」

 裏を返せば、骨格は見えていたので、メンバー入りが当確の久保や堂安と交代で起用された三好康児(24)と食野亮太郎(22)らは、「選考外」を通告されたようなものだろう。横内監督としては、アピールの機会を与えたと思っているかもしれないが、その起用法は酷だと感じずにはいられなかった。

 そして3試合を取材して痛感したのは――A代表にも当てはまるが――現代サッカーのトレンドを実践していることだった。簡単に言うと、ボールをロストした瞬間から守備が始まること。攻撃では個人が仕掛けることの2点である。

 ジャマイカ戦後に横内監督はノーゴールに終わった前田に対し、前線からのチェイスやプレスバックを評価していた。FWも守備をするのは当たり前で、特にスピードのある選手の相手DFに与えるプレッシャーは効果的だ。

 個人で仕掛けることの重要性は改めて説明する必要はないだろう。よく「守備は組織で」と言われるが、“フィジカル・モンスター”とも言える酒井のプレーを見れば守備も原則的に個人であることが分かる。「個の強さ」で酒井も吉田もヨーロッパで生き残ってきた。

 同じように攻撃でもボールを持ったら個人で相手を剥がせるか。五輪代表もA代表も海外組が主力のため個の力で勝負して局面を打開しているし、国内組では三笘と相馬がドリブル突破により「個の力」をJリーグで発揮している。

メダルの可能性

 日本代表のW杯予選は相手が格下だった。そしてU-24日本代表の国際親善試合も3月のアルゼンチンのような強豪ではないため、正直物足りなさは残った。それでもチームの熟成と進歩を感じた。

 サッカー界のご意見番として名高いセルジオ越後氏は、相手が弱いため守備陣のテストになっていないと指摘した。それはそれで正論である。だからこそ、守備陣にOA枠として経験豊富な3選手、計算できる選手を森保監督は選択したのではないだろうか。

 去年1月のU-23アジア選手権をタイで取材した時は、グループリーグで敗退したチームに「メダルなんてとても無理」と思ったものだ。しかし新型コロナの影響で東京五輪が1年延期されたことで、上田や三笘ら当時の大学勢がプロになり長足の進歩を遂げた。OA枠の3人も加わった今回の連戦を取材し、どんな色になるかは別にして、メダルの可能性を感じたのは私だけではないだろう。

 ただし、そのためにも初戦の南アフリカ戦は勝利が義務づけられることに変わりはない。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮取材班編集

2021年6月15日掲載

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