菅首相の国際会議デビュー G7におけるファッション・チェック

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両方の肩が2センチずつ大きいほど

 イギリス南西部のコーンウォールにおいて、6月11日から13日の日程で行われていたG7サミット(主要7か国首脳会議)が終わった。新型コロナウイルスの感染拡大以降、各国首脳が初めて対面で集った場であり、まとめられた首脳宣言には、中国の海洋進出に深刻な懸念の表明や途上国へのワクチン支援、そして東京オリ・パラ開催への支持などが盛り込まれた。菅義偉首相にとって国際会議デビューの場であり、全首脳から五輪への支持を取り付けたことに胸を張ったが、国内の一部ではスーツの着こなしに注目が集まっていた。たかがファッションというなかれ。ここからもトップの人間性が垣間見えるのだ――。

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「日本のリーダーが国際会議に出席するたびに、スーツの着こなしがなっていないとか物足りないとか指摘をされますが、今回は特に良くなかったですね」

 と話すのは、ファッション・ブランド「オブジェ・スタンダール」のデザイナー、森健氏(55)だ。

「何よりもまず、ジャスト・サイズを選ぶというのが着こなしの要諦であり、その点、菅さんは首脳の中で最下位でした。これまでは英国のジョンソン首相と米国のトランプ前大統領が首脳の中では最下位争いをしてきました。ジョンソン首相は今回も褒められたものではありませんが、彼の場合は寝癖のついた髪型も含めてある種のスタイルとして受け入れられているところがありますね。トランプ前大統領は吊し(既製服)を着て、着こなしとか全く気にしていませんでしたが、その押し出しの強さで着こなしの拙さを問題化させなかったタイプでした。その意味では2人ともファッション・チェックの俎上にあげるには相応しくないかもしれません」

 菅首相と同じく国際会議デビューのイタリアのドラギ首相も、ジャスト・サイズには見えなかったが、

「確かにそうでしたが、菅さんの印象が強烈すぎました。両方の肩が2センチずつ大きいほどオーバーサイズだったのではないでしょうか」

こういう場で選ぶべきは

 前首相の安倍晋三氏はブルックスブラザーズの既製服でまとめていたし、麻生太郎財務相は東京・青山の店にオーダーしている。

「オーダーなら自然とジャスト・サイズになりますが、吊しでも安倍さんのように自分の身体に合ったものを選び、調整することができるはずです。ジャスト・サイズを着るだけで菅さんの印象はずいぶん変わるでしょう。それと、気になったのは姿勢がすごく悪い点ですね。かなり『着こなし偏差値』を下げるきっかけになっています。靴のソールを見てみると、アウトライン側が目立って削れているかもしれません。その点、米国・バイデン大統領の姿勢の良さは際立っていました」

もともと日本人には着物がよく似あう。いっそ首相は着物を着る方が良いのでは、といった指摘もかねてからないわけではない。が、森氏によれば、着物は姿勢が良くない人には全く合わず、少なくとも菅首相が選択しなかったことは「正解」だという。

「今回のように、世界が注目する場所では模範のようなスタイルを見せて欲しかったと思います。こういう場で選ぶべきは、紺のスーツとネクタイ、そして白シャツ。靴はオックスフォードと呼ばれる内羽根のタイプの黒で、メダリオン(トウ部分などの飾り)がないフォーマルな印象のものにほぼ限られます。アンダーステイトメント、控えめな装いの美学ということで、それにぴったりハマっていたのは、欧州理事会のシャルル・ミシェル議長でした(メインの写真で言うと菅首相の左隣)。ジャケットから覗くシャツの長さなども絶妙ですね」

 そこへ行くと、カナダのトルドー首相はTPOをわきまえていなかったことになる。

「はい、トルドー首相は派手めのソックスを穿いて主張することがこれまでもありましたが、今回も明るめのグレーというスーツの色、柄のネクタイ、茶色の靴と場違いで軽薄さが目につきました」

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