“シロップ入れますか?”の隠語で酒提供、会員制も増えて… 新宿ゴールデン街の今

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クラスターの危険もおかまいなし

 開店している店も、一応、20時までの営業となっている。だが、それ以降の営業を続ける店も少なくない。表の看板の明かりを消し、文字通りの闇営業というわけである。常連たちは店主と直接LINEなどで連絡を取り合って、営業中であることを確認して店に入っていく。このご時世に飲めるところは貴重だから、私が行っていた店はすぐに満員になっていた。

 ゴールデン街には、10人も客が入ればいっぱい、というところが多い。一応、カウンターと客席にビニールカーテンの仕切りはあるものの、横の客とは“密”で語り合うことになる。クラスターの危険がつきまとうわけだが、そんなことを気にしている客はそもそもゴールデン街になど来ないのだろう。おでこで測るタイプの体温計を置いている店も、あくまで形だけ。一度もチェックしていなかった。

 これまで東京都は、要請に応じずかつ酒類を提供している飲食店に「休業命令」を行ってきた。ゴールデン街には、これまで紹介してきたような“こっそり”ではなく、堂々と営業をしている店も何軒かある。

 私の知っているそういう店では、昨年4月の緊急事態宣言時をのぞき、コロナ前と変わらず営業をしている。その理由を「お客さんが待っているから」と説明するが、中には休んだところで給付金がもらえない、つまりこれまで確定申告をきちんとやってこなかったため、営業するしかない店もあるようだ。

 はたして、こういった店にも休業命令は出されてしまうのだろうか。この店はいまのところ「スルーされてきた」(店員談)という。これまで休業命令が出されたのは〈外から見ても営業をしているのが明らかで、飲食につながる人の動きを増やしたり、ほかの飲食店の営業を誘発したりするおそれがある〉(NHKの報道より)と判断された店だという。それを鑑みれば、新宿の片隅でひっそりとやっているゴールデン街の店は、お目こぼしを受けてもよさそうなものだが……。ちなみにこの店にはコロナ禍の中で何度か行っているが、いつも満員である。

 はっきり言えば、ゴールデン街よりもいい酒を出す店は都内にいくらでもある。それでも常連たちがこの街に顔を出すのは、ゴールデン街にしかない人との交流があるからだ。1日から営業を再開したある店のママはこうも言っていた。

「給付金が出るから、別にわざわざ店を開ける必要はない。それでもやっている理由は、“ゴールデン街に来る”という習慣をお客さんたちが失ってしまうのが怖いから。だからなるべく、普段と同じように店をやっているんです。さすがに朝まで営業とはいかないけれど」

 昨年12月、ゴールデン街が“統一”されたことがニュースになった。北側の「新宿三光商店街」と南側の「新宿ゴールデン街商店街」は、それまで別々の看板を各通りに掲げてきたが(客を取り合った対立の歴史もあったそうだ)、このたび「新宿三光商店街」の看板にも「ゴールデン街」の文字が入ることになったのだ。コロナ禍にともに立ち向かおうという決意の表れである。

酒井あゆみ(さかい・あゆみ)
福島県生まれ。上京後、18歳で夜の世界に入り、様々な業種を経験。23歳で引退し、作家に。近著に『東京女子サバイバル・ライフ 大不況を生き延びる女たち』ほか、主な著作に『売る男、買う女』『東電OL禁断の25時』など。Twitter: @muchiuna

デイリー新潮取材班編集

2021年6月14日掲載

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