日本人にマスクを外させるのは「外圧」? 海外のマネでしか変われない国民性(中川淳一郎)

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 結局日本は「黒船」をはじめとした外圧がないと変われないことを、コロナ騒動は示しました。日本人は実感よりも周囲を見てそれをマネするだけ。

 私は昨年5月以降、実感として「コロナ、大したことないんじゃないか?」と思うようになりました。周囲で陽性者がまったく出ないし何しろ若者はほぼ死なない。厚労省が発表した5月19日時点の死者数は10代以下は0人、20代6人、30代20人、40代87人、50代238人、60代764人、70代2441人、80代以上6702人。70代以上が88.5%で、60代以上は95.9%。これって「寿命」です。

 昨年4月7日、第1回の緊急事態宣言発令時の東京の陽性者数は87人でした。この時のビビリっぷりは、医療が逼迫するイタリアやアメリカで大量に並ぶ棺桶の映像が影響したのでしょう。

 現地在住日本人ジャーナリストやTVに出演する専門家は「今のNYは2週間後の東京」などと煽り続ける。この時は「伊や米のようにならないために緊急事態宣言を出しておこう」という考えには合理性があった。何しろ未知のウイルスだったのだから。その後減ったものの夏に再びドーンと増え、第3波たる1月の第2回緊急事態宣言時の東京の陽性者数は約2500人。結局感染症なんて抑えきれないんです。

 この段階で、「若者はほとんど死なない」という事実は分かっていたのに、TVと政治家は若者と酒と飲食店と娯楽施設を悪者にし、高齢者を守れ! の掛け声を出し続ける。そして、「気の緩み」を嘆く。

 感染者数が多かった国ではワクチン接種が始まり、最近は大規模イベントやマスクなし生活が戻って来た様子が報じられています。ここでTVは、「日本はワクチンが遅いからまだまだこの状態になれない。羨ましい」とやり、自虐報道を延々続ける。

 あのね、彼らはヤバかったからワクチンを打ったの。日本は元々過剰対策だったの! 散々雇用を奪い、倒産と自殺者を激増させるほどの痛みを強要する必要なんてなかったの! そんなもん、昨年夏の段階で分かっていたろうに。

 五輪についても、IOCのコーツ副会長は緊急事態宣言下でも開催できると発言。これに日本人は猛反発しましたが、同氏からすれば「お前らの国、そんなにヤバくないじゃん」と思っているのでしょう。日刊スポーツは、組織委幹部の「欧米に比べ、日本は感染を抑え込んでいる。それなのに『何で東京がロックダウンをやるんだ?』とよく言われる」というコメントを紹介しています。もう、菅首相や小池都知事、橋本会長、丸川五輪相のような日本人が何を言っても変わらないから、コーツ氏に言わせたのでは。

 今、マスクを外した各国の人々の様子を日本人もチラチラと見ながら「そろそろオレらも……」なんて思い始めている。「でもワクチンまだだから無理かな」と、ここはマネしないのですね。ただ、一つの期待は五輪で来日する数万人規模の記者・関係者です。彼らがノーマスクで歩いていても「マスク警察」はビビッて注意できない。その様を見て「あいつらだけズルい」と猛暑の中マスクを外す連鎖が生まれるかも。これも外圧です。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2021年6月10日号掲載

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