カップヌードルがフタ止めシール廃止 ロングセラーでも“変化”しなければならない事情

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BOSSブランドから「紅茶」が出るワケ

 ロングセラーが進化する背景には、SNSなどの普及によって消費者が目にする情報量が増加し、新ブランドを立ち上げても、それが浸透しづらくなった事情がある。かつてに比べてテレビの視聴者が減り、テレビコマーシャルという強力な“洗脳装置”が機能しにくくなったこともあるだろう。さらには各社の商品開発レベルが上がり、差別化できる商品を世に出すことも難しくなっている。

 実際、コンビニには年間約5000もの商品が新商品として売り場に並べられる。そして既存の商品と競合しながら、売り場に並ぶ平均3000の商品のうち、じつに7割が入れ替わる。それほどまでに新商品の定着率は低いのだ。

 サントリーは、コーヒーブランドである「BOSS」から紅茶を発売したり、「天然水」ブランドから緑茶を発売したりと、すでに認知されている強いブランドから、派生の形で新商品を売り出すやり方を取っている。まったくの新商品、新ブランドで販売することがいかに難しいかという証左である。

 こうした事情があるから、ロングセラー商品に時代ごとの変化を加えることは、非常に理に適った戦略といえる。江崎グリコの「キスミント」や森永製菓の「チョコフレーク」は棚から姿を消し、明治の「カール」も関東ではもう買えない。新商品は定着しづらく、ロングセラーといえども“あぐら”をかいてはいられない……そんな多様化する現代で奮闘する商品事情が、カップヌードルのフタシール廃止から見えてくるのだ。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務・講演など幅広く活動中。フジテレビ『Live News α』レギュラーコメンテーター、Yahooニュースオーサーとして「最新流通論」を連載中。

デイリー新潮取材班編集

2021年6月7日掲載

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