「経口中絶薬」が日本で初の承認へ 副作用は?価格は?産婦人科医に聞いた

ドクター新潮 医療

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注意が必要なのは子宮外妊娠

 どのように使用するものなのだろうか。

「ミフェプリストンを最初に服用します。これは妊娠を継続させるプロゲステロン(黄体ホルモン)の働きをブロックするもので、次に服用するミソプロストールで子宮の収縮を起こさせ、胎児を外に出します。ちなみに、ミソプロストールはサイトテックという製品名で、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療でも使われています。以前、悪知恵の働く人が、女性に飲ませて流産させようとする事件を起こしたこともありました。

 これまで発表された論文では、経口中絶薬だけではうまくいかず、手術が必要になるケースが17%、輸血が必要になるほどの大出血が起こるケースが3%というデータが出ています。もっとも注意が必要なのは、子宮外妊娠の場合です。子宮外妊娠を念頭に置くことなく、妊娠検査薬で陽性反応が出たからと言って安易にこの中絶薬を飲むと、手術や輸血が必要なほどの腹腔内出血を起こしてしまうケースが想定されます。子宮外妊娠は、産婦人科医が何度も検査をして、ようやく診断がつくこともあるもの。こういったケースがあるので、体への負担は少ないとはいえ、自己判断で使用するのはやはり危険です。

 ただ、それでも医師のきちんとした診断の下で処方、使用すれば、多くの人に有効です。腹痛や吐き気といった副作用も、人工的に陣痛を起こさせて、正常な妊娠を終了させるのだから、ある程度、想定内のことです」

トラウマになりかねない

 しかし、これから「承認」はされても、薬をどう扱うのか、価格設定はどうするのかなど、ルール作りは必要だと指摘する。

「私たちの立場で言えば、産婦人科医は外科医なので、飲み薬を処方するよりも自分の手で処置をすることの方が、正直、安心感はあります。内服薬を処方しただけだと、それを飲んでくれているのか、2つ目の薬を飲むまでの時間を守ってくれているのか、確認するのは難しいですから。

 この経口中絶薬の場合、妊娠初期であれば、入院しなくても自宅で薬を飲むことで胎児を外に出すことができるわけです。ただ、中絶がうまくいった場合、これまで産婦人科医が手術をして処置していた内膜と胎芽を、本人が目にしてしまう。多くの人が相当動揺するのではと危惧しています。妊娠の時期によって量は変わりますが、かなり大きな血の塊のようなものですので。また、手術で処置した初期の赤ちゃんたちを、私たちは感染性の物質として処分しています。それが自宅で出した場合、生ゴミとして捨てるのか、トイレで流れてしまうのか……、いずれにせよ自分で処理するならトラウマになりかねません。

 価格帯は海外では1000~2000円のようですが、日本では中絶は自費扱いです。中絶手術代が妊娠初期で10~15万円であることを考えると、そこまで安価になる可能性は低いのではないかと思っています。

 そもそも日本ほど手厚い保険で治療を受けられる、しかも自分で医者や病院を選択して治療を受けることができる国はほとんどありません。簡単に病院を受診できない国においては、ドラッグストアなどでさまざまな薬品が簡単に購入できる代わりに、自己責任が求められるわけです。

 さらに、保険適用ではない自費での治療はそれぞれの病院で価格設定ができるので、サービスのグレードによって値段も自由に決められています。ですから日本で、経口中絶薬が使用される際には、ただ処方するだけではなく、入院を促して看護・管理的な部分を含めてまあまあ高額な価格設定をする病院もあるかもしれません」

 それでも高尾医師は「女性にとってマイナスではない」と言い切る。

「日本は女性のヘルスケア全体が、世界から遅れています。選択肢が増えるという意義はとても大きく、経口中絶薬も女性のヘルスケアのうちのひとつと捉えるべきでしょう」

デイリー新潮取材班

2021年6月7日掲載

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