尾身会長の発言が“過激化”した理由とは? 菅政権の五輪有観客・待望発言が引き金に

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「普通はないわけですよね」

 新型コロナ対策の司令塔でありキーマンである政府分科会の尾身茂会長の発言が、ここ最近ラジカルになっているのではないかという指摘がある。特に東京オリ・パラの開催を巡ってそういった取り上げられ方をされているようだが、その一方で、職責を全うしているだけと見るムキもある。

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 まずは、尾身会長の最近の発言について、少し長くなるが、ざっとおさらいしておこう。

〈今の状況で(五輪を)やるというのは、普通はないわけですよね、このパンデミックで。そういう状況のなかで、やるということであれば、オーガナイザー(主催者)の責任として、開催の規模をできるだけ小さくして、管理の態勢をできるだけ強化するというのは、私はオリンピックを主催する人の義務だと。そもそも、今回のオリンピック、こういう状況のなかで、一体何のためにやるのか。目的ですよね。そういうことが、ちょっと明らかになってないので。このことを私はしっかりと明言することが、実は人々の協力を得られるかどうかという、非常に重要な観点だと思うので〉(2日の衆院厚生労働委員会)

〈開催すれば国内の感染や医療の状況に必ず何らかの影響を起こす。感染のリスクや医療逼迫(ひっぱく)への影響について評価するのはプロフェッショナルとしての責務だ。選手のリスクは低いと思う。しかし、ジャーナリストやスポンサー、政府要人ら大会関係者の管理はそう簡単ではない〉(3日の参院厚生労働委員会)

〈政府にアドバイスしてもIOC(国際オリンピック委員会)には届かない。どこに述べたらいいか、今検討している。(五輪を)やるならどういうリスクがあるか申し上げるのがわれわれの仕事だ〉(同)

“人々の移動まで止める必要はない”とも

 発言はワイドショーなどでも大きく取り上げられ、それに呼応するように朝日新聞デジタルは6月3日、〈尾身氏「普通はない」発言、自民幹部反発「言葉過ぎる」〉というタイトルの記事を配信し、政権与党内での尾身発言への捉え方の違いについてこう描写していた。

〈公明党の北側一雄・中央幹事会会長は「ご指摘はその通り。菅首相は五輪の意義を国民に改めて説明していただきたい」と語った。一方、自民幹部は「ちょっと言葉が過ぎる。(尾身氏は)それ(開催)を決める立場にない」とし、「(首相は五輪を)やると言っている。それ以上でも以下でもない」と不快感をにじませた〉

 政治部デスクは、

「尾身さんは医学博士として感染症対策の権威として真っ当な発言されていると思いますが、発言が切り取られたり行間を敢えて読まれたりして、五輪を中止させたいとか菅政権を批判したい人たちが利用している部分もありますね」

 としたうえで、こんな話をする。

「自民党の閣僚経験者と話していたら、尾身さんが分科会の脇田会長代理らと行った座談会(2020年2月27日の日経新聞)での発言が話題にのぼりました。尾身さんは“人々の移動まで止める必要はない。一人ひとりの感染予防はもちろん重要だが、もっと合理的な21世紀型の対策があるはずだ”と確かに話しているんですね。当時と今とでは状況が違いますから一概には言えませんが、尾身さんに不満がある人たちは、今回の一連の発言に“政府と一蓮托生でやってきていたのにここへ来てハシゴを外された”ような印象を持っているのかもしれません」

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