審判に「負けたらお前のせいだぞ!」…長嶋茂雄が監督時代に激怒した「4つの大騒動」

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「ここに当たったんだ!」

 翌01年6月30日の広島戦では、抗議中にエキサイトして審判の帽子を引っ張ってしまうハプニングも起きた。

 2回に高橋由伸の右越えソロで先制した巨人は、なおも2死二塁のチャンスに、仁志敏久が黒田博樹の投球をヘルメットのひさしの部分に受けた。

 直後、審判団が黒田を危険球退場にすべきかどうか協議したが、「ひさしの部分だから」という理由で退場にはしなかった。

 だが、両軍合わせて3つ目の死球で、すでに警告試合も宣告されていたことから、長嶋監督は「ひさしだろうが、センターだろうが、即刻退場のルールがある」と猛抗議。さらに興奮のあまり、「ここに当たったんだ!」と責任審判の谷博一塁塁審の帽子のひさしを右手で引っ張った。

 これまたヒヤリとする場面だったが、谷審判は「ダメですよ」と注意するだけにとどめた。

「お前のせいだぞ」も、帽子を引っ張る行為も、退場判断は微妙だが、例えば、巨人にも在籍した“退場王”タフィ・ローズのようなトラブルメーカーだったら、同様の言動でも即アウトだったかもしれない。

 審判も長嶋監督には優しく対応し、“球界の至宝”を「退場させてはいけない人」と気遣う様子が感じられる。これもある意味、ミスターならではの人徳と言えそうだ。

 しかし、息子の長嶋一茂には“親の七光り”は通じず、巨人時代の94年5月10日のヤクルト戦で、三塁タッチプレーの判定で揉め、親子二代で初の退場となっている。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮取材班編集

2021年6月5日掲載

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