「おかえりモネ」、ミーちゃん「蒔田彩珠」の存在感 所属事務所も個性派がズラリ

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 NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」(月~土曜午前8時)が放送開始から3週目に入った。主人公のモネこと永浦百音を演じる清原果耶(19)の演技力の高さは相変わらずだが、その妹の未知に扮している蒔田彩珠(18)の存在感も目を引く。所属芸能プロダクションは個性派の女優が揃ったユマニテだ。

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 朝ドラでヒロインの妹役が注目されることは珍しくない。清原もそうだった。広瀬すず(22)がヒロイン・なつを演じた2019年度前期の朝ドラ「なつぞら」に妹・千遥役で出演し、脚光を浴びた。

「おはようモネ」でモネの妹である未知に扮している蒔田彩珠も注目を集めている。独特の存在感が視線を集める理由のようだ。

 声は低く、眼差しは冷めている。性格もクール。父親の耕治(内野聖陽、52)を煙たがっている。ストレートで分かりやすい性格のモネとは随分違う。

 蒔田のことを掘り下げようと思うが、その前に「おかえりモネ」の現状に触れたい。放送は2週目が終了。最初の見せ場も済んだ。

 宮城県の気仙沼湾に浮かぶ亀島を出て、同県登米市の森林組合に勤めたモネが、山林で小学生の男児1人と遭難してしまう。モネが小学生たちの林間学校に付き添い、山林に入ったところ、急な雷雨に襲われたためだ。

 危機一髪。その時、山林の天候の行方を電話で教えてくれたのが、東京のテレビ局でお天気キャスターを務める気象予報士・朝岡覚(西島秀俊、50)だった。

 お陰でモネは苦境を脱した。人の役に立ちたいと強く思っていたモネは気象予報士に憧れ始める。

 現時点での舞台は2つだ。まずモネの生家のある亀島。架空の島でモデルは気仙沼大島と見られている。

 もう1つが登米。モネは高校を卒業した直後の2014年4月に移り住んだ。東日本大震災時に自分が何も出来なかったという後ろめたさが島を出た理由だ。現在、描き出されているエピソードも今から7年前の出来事である。

 島に残ったのは銀行員の父・耕治と元小学校教師の母・亜哉子(鈴木京香、52)、牡蠣の養殖業を営む祖父・龍己(藤竜也、79)、そして蒔田が演じる未知である。

 未知はモネより2歳年下で水産高校の2年生。周囲からは「ミーちゃん」と呼ばれている。

「試験なんて簡単過ぎてつまんない」(未知、第8話)

 頭がいいのだ。勉強をしなくても試験問題が解けてしまう。それも冷めた目をしている理由かも知れない。

 ただし、熱くなることもある。どうやらモネの幼なじみで漁師のりょーちんこと及川亮(永瀬廉、22)に恋心を抱いている。

 第6話でのこと。港で偶然、鉢合わせになると、表情をパッと輝かせ、クールな雰囲気が吹き飛んだ。そして他愛もないことをうれしそうに話した。

 別れ際、「じゃあ気を付けて。やっぱり船危ないし」と亮を気遣った未知。亮から「うん、ミーちゃんも気を付けて」と言葉を返されると、喜色満面に。

 その後、小さなガッツポーズを何度も繰り返した。無邪気な少女になった。

 16歳という多感な時期の少女を蒔田が熱演している。いや、既に日本アカデミー賞新人俳優賞(2020年映画「朝が来る」)や毎日映画コンクール女優助演賞(同)などを獲っている実力派女優だから、与えられた役を忠実にこなしているだけかも知れない。

 7歳で子役デビュー。10歳の時には関西テレビが制作し、フジテレビ系で放送されたドラマ「ゴーイングマイホーム」(2012年)で阿部寛(56)と山口智子(56)の1人娘を演じた。「あの子か」と思い出す人も少なくないのではないか。

 実は、大震災をテーマとするドラマに出演するのは初めてではない。脚本家・山田太一さん(86)が被災者の癒えぬ悲しみを描いたテレビ朝日の「五年目のひとり」(2016年)にも重要な役柄で登場している。

 主人公は津波で8人の家族をいっぺんに失ってしまった男(渡辺謙、61)。悲しみから逃れようとがむしゃらに仕事に打ち込んでいた。

 ある日、男は近所にある中学校の文化祭で、リズムダンスを披露する少女に目を奪われる。蒔田だ。少女は先立たれた愛娘に瓜二つだった。その後、2人の奇妙な交流が始まる。

 名優・渡辺を相手に堂々とした演技を見せた。大人と絡む時、呑まれてしまわないのが蒔田の特徴の1つである。

 このドラマは山田さんたちの眼鏡にかなっての出演だった。これまでドラマ界、映画界の大物に買われてきた。

 2007年に「殯の森」でカンヌ国際映画祭グランプリを獲った河瀬直美監督(51)もその1人。前出「朝が来る」で準主演級の少女に蒔田を抜擢した。

 未知とは全く違った役だった。14歳で子供を生む中学生の少女役である。生まれた子供は不妊に悩んでいた夫(井浦新、46)と妻(永作博美、50)に特別養子縁組された。

 だが、6年後に少女は夫婦に電話を入れる。そして「子供を返して。それがだめならお金をください」と訴えた。

 少女は子供を生んだ時点までは無垢だったが、どんどんすさんでいった。あまりの変化に観客側は圧倒される。蒔田はうまい上に役の幅が広い。

 幼いころは女優向きの性格ではなかったらしい。

「すごく内気だったし、すぐ緊張しちゃう子でした」(*1)

 転機は、「小学4年生ぐらいで長い髪をばっさり切った」こと(*2)。性格までガラッと変わり、物おじすることがなくなったそうだ。ドラマ「ゴーイングマイホーム」に出演する直前だ。それまでの自分と決別できたらしい。

 現在の本人はどうか。インスタグラムを見てみると、ギターを弾いていたり、愛犬と戯れたり、ごく普通の18歳に映る。

 もう1つの転機は2015年にユマニテに所属したことに違いない。名伯楽として知られる畠中鈴子さんが代表を務める芸能プロだ。

 この芸能プロは個性派で演技のうまい女優と俳優がズラリとそろっているのが特色。アイドルっぽい人は皆無。名前を挙げたら、うなずいてもらえるはずだ。女優に絞って記したい。

■安藤サクラ(35) 2018年度後期のNHK朝ドラ「まんぷく」のヒロイン・福子役など。

■門脇麦(28) 大河ドラマ「麒麟がくる」(2020年)のヒロイン・駒役など。

■岸井ゆきの(29)TBS 「天国と地獄~サイコな2人~」(2021年)日高優菜役など。

■古川琴音(24) 日本テレビ「コントが始まる」(2021年)
つむぎ役など。

■シム・ウンギョン(26) テレビ朝日「七人の秘書」(2020年)パク・サラン役など。

■樋口可南子(62) テレビ東京「コタキ兄弟と四苦八苦」(2020年)ゲストの島須弥子役など

 これでも一部である。芸能界の一大勢力と化している。

 畠中代表の眼力と育成力は芸能界で有名。特にその俳優と女優に合った仕事を選ぶ能力は抜群とされている。2018年に独立したが、元アイドルの満島ひかり(35)も第一線の女優にまで育て上げた。

 一方、テレビ局に対して一歩も引かないことでも知られる。例えば、途中から役柄の性質が変わってしまうようなことを許さない。女優、俳優を守るためだ。

 育成環境が整っているから、蒔田の将来は安泰か。

 一方、演じている未知は今後、進路問題が浮上する。成績優秀だが、進学しないと言い始める。

 未知の出番は今後も多い。蒔田はますます注目されそうだ。

*1、2 2020年10月21日付 読売新聞夕刊

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮取材班編集

2021年5月31日掲載

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