低迷カープの“希望の光”…栗林良吏ら「ルーキ―三人衆」の意外な共通点

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左のリリーフとして貴重な存在

 続いて、森浦はどうか。高校時代はプロから注目されるような投手ではなかったが、天理大では1年春秋連続でリーグMVPに輝くなど、早くから主戦として活躍してきた。

 その後、少し調子を落とした時期もあったが、評価を大きく上げたのが4年秋のシーズンだ。大阪体育大との試合では7回参考記録ながらノーヒット・ノーランを達成するなど、大車輪の活躍を見せてベストナイン、敢闘賞、特別賞を受賞。当初は社会人に進むとも言われていたが、最終的にはドラフト2位という高い評価でプロ入りを勝ち取った。

 ストレートは140キロ台前半が多いものの、ボールの出所の見づらいフォームは下級生の頃からの特長で、サウスポーらしい角度があるのが持ち味だ。また、右打者にも左打者にも、腕を振って内角に速いボールを投げられるというのも大きな武器である。絶対的なボールの力がないため、慣れられてくると厳しい可能性はあるが、走者を背負ってからの粘り強さがあるため、左のリリーフとしては今後も貴重な存在となりそうだ。

タイプ的には先発か

 最後は大道。八戸学院大では1年春から先発を任されており、リーグ戦では通算22勝をマークしている。特に目覚ましかったのが最終学年での成長ぶりだ。秋のリーグ戦では36回を投げて60奪三振、防御率0.25という圧巻の数字を残している。

 開幕戦の岩手大戦で7回参考ながらノーヒット・ノーランを達成したピッチングを現地で見ることができたが、コンスタントに140キロ台後半をマークしたストレートと、同じ腕の振りから投げ込むスライダー、カットボールを武器にしたピッチングは全く打たれる雰囲気がなかった。

 全国の舞台での実績が乏しかったこともあってか、ドラフトの順位は3位となったが、巡り合わせによっては上位指名の可能性もあった。プロでは、厳しいコースを狙って少しコントロールに苦しむ場面があるとはいえ、ストレートの勢いはチームの中でも間違いなく上位である。現在は中継ぎを任されているが、タイプ的には先発が向いているように見える。来年以降は配置転換も十分に考えられるだろう。

 3人に共通しているのは、高校時代は全国的には無名だったにもかかわらず、大学では4年間を通じて安定した成績を残し続けてきたという点である。また東京や関西の主要リーグではなく、愛知大学野球、阪神大学野球、北東北大学野球といういわゆる“地方リーグ”で腕を磨いてきたというところも共通点だ。

 中央球界に比べるとレベルは落ちるが、その中で下級生の頃から結果を残したことに満足することなく、右肩上がりで力をつけてきたというところに意識の高さが感じられる。プロでも順調なスタートを切ったが、苦しいチームを救うためにも、さらに切磋琢磨してレベルアップを果たしてくれることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年5月28日掲載

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