中国人民解放軍がコロナ治療薬として期待される「アビガン」の特許を取得 巧妙な手口に日本の関係者は危機感

国内 社会 2021年5月27日掲載

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春節前に出願

 物質特許に対し、新しく発見された“使い道”の権利を守るのが「用途特許」になる。

 毎日新聞は17年2月に「梅酢ポリフェノール:JA紀南と田辺市、「用途特許」を取得 インフルウイルス不活化 医薬品や化粧品商品化へ」という記事を掲載した。

 梅酢に含まれる「梅酢ポリフェノール」にインフルエンザウイルスの増殖を抑えることが研究で分かり、「用途特許」を取得したという記事だ。

 JA紀南などは「梅酢ポリフェノール」という新しい物質を開発したわけではない。新しい使い道を発見したことにより用途特許を取得したのだ。

 本題に戻れば、人民解放軍がアビガンの用途特許を出願したのは、昨年の1月21日と公告されているという。

「人民解放軍もCNIPAも国の組織です。中国の政治システムを考えれば、国が申請した特許は即決されてもおかしくありません。それを1年も審査したことにしたのは、『きちんと調べました』というポーズではないでしょうか。更に問題なのは出願日です。昨年の春節は1月24日に始まりましたから、出願日の1月21日はその前です。ちなみにクルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス』から香港で下船した男性の感染が判明したのは、2月1日のことでした」(同)

データを独占

 新聞のデータベースで1月21日の記事を調べてみた。読売新聞は朝刊に「新型肺炎 感染拡大 中国政府チーム 『人から人へ』明言 武漢 死者3人に」の記事を掲載していた。

「特許の出願は、新型コロナウイルスが世界中に広がる前のことです。裏を返せば、中国が新型コロナのウイルスやデータを独占していた時期と言えます。実際、実験データは武漢のウイルス研究所から得られたもので、それを利用してアビガンの有効性を実証し、特許取得に結びつけたというわけです」(同)

 中国の巧妙なところは、昨年2月、世界的な学術誌に特許の根拠となった実験データを発表したことだ。

「2月だと、人民解放軍が特許を出願していることなど誰も知りません。中国はデータの開示に積極的で、感染症対策に貢献しているという印象を世界に与えようとしたのでしょう。しかし特許を取得したとなると、学術誌は『中国が最も早く効果を確認した』という証拠にも使えます。こうしたことを中国は全て分かった上でやっていると見るべきでしょう」(同)

 特許の世界には、特許協力条約(PCT)に基づく国際出願という制度がある。

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