猪瀬直樹・元東京都知事に訊く 「東京2020大会」開催の是非、小池知事はどうする?

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開催前の世論

 どの記事も6月25日に都議選が告示されることに触れ、小池知事が顧問を務める「都民ファーストの会」が公約に五輪中止を掲げる可能性について報じている。

 更に興味深いのは、都庁の関係者が取材源に示されている記事が散見されることだ。これは何を意味するのか、猪瀬氏に訊いた。

「東京の政治的トップが、自ら五輪の中止や返上を提案したら前代未聞です。小池知事の“決断”は世界中で議論になるでしょう。賛成の意見ばかりでなく、五輪は開催すべきという反対意見も相当な数に達するはずです。世界中が混乱して収拾がつかなくなる恐れがあります。小池さんの胸の内がどうであれ、都議選の公約に掲げるには、あまりにリスクが大きすぎるのではないでしょうか」

 都議選を目前に控え、小池サイドがリークしたり、観測気球を目論んだりした記事──というのは、さすがに深読みしすぎだという。

「なぜこういう記事が出るかと言えば、小池知事と都庁幹部や組織委のコミュニケーションが不足しているからでしょう。知事が何を考えているのか分からず、周囲が疑心暗鬼になっているのだと思います」(同・猪瀬氏)

国際公約

 何とも心許ない話だが、猪瀬氏は「粛々と準備を進め、東京五輪を開催すべきです」と言う。

「前回の東京五輪は1964年に開かれましたが、その2年前に旧総理府が世論調査を行い、『東京五輪は立派にやれますか?』と質問しました。『やれる』と回答したのは全国で23%、東京は僅か10%だったという記録が残っています。その後、組織委員会のアピールが功を奏して支持率は上がります。2012年にIOCが東京五輪の賛否を問うと、賛成は47%という結果でした。しかし、招致決定直前に90%まで上昇しました。五輪の支持率は“気分”で動くものなのです」

 東京五輪反対論を減少させ、五輪開催に理解を示す世論を伸ばしていくためには、やはりワクチン接種を増やしていくのが重要だという。

「東京五輪が開催される7月23日までの間にも、ワクチンの接種実績は相当な伸びを示すはずです。パラリンピックが閉幕するのは9月5日で、当然ながら五輪の開催中もワクチンの接種は続けられます」(同・猪瀬氏)

 行政の不手際が各地で起きるなど、先行きを不安視させる報道は今でも相次いでいる。だが、猪瀬氏は「反対世論の沈静化も時間の問題でしょう」と冷静に話す。

「接種が進めば、現場の医療関係者だけでなく住民側も、手順に慣れていきます。日本国民が落ちつきを取り戻すのは、そう先ではないでしょう。新型コロナウィルスはワクチンで封じ込めることができるという安心を日本人が持つようになれば、菅内閣の支持率も回復するでしょうし、五輪開催に理解を示す世論も増加するはずです」(同・猪瀬氏)

 実際に五輪が開幕すれば、それだけで世論が劇的に変化する可能性もあるという。柔道などで日本人選手の金メダルラッシュが起きれば、東京五輪を応援する層が一気に増えてもおかしくない。

「東京五輪の開催は国際公約です。韓国の元徴用工裁判で、資産差し押さえの判決が出ました。日本国内では国際法に違反しているとの指摘が多かったわけですが、日本が東京五輪を中止・返上することは、国際公約を一方的に破棄することを意味します。日本の対外的な信用は失墜し、今後はサッカーのW杯など、世界的なビッグイベントの招致が難しくなる可能性もあると思います」

デイリー新潮取材班

2021年5月22日掲載

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