医療従事者向け「N95マスク」で詐欺被害100億円超え 相次ぐ訴訟の“加害者”には有名病院の元部長も

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マスクブローカー

 不織布マスクやウレタンマスクなどとは違い、医療従事者向けの「N95マスク」はいまなお品薄状態にある。目下、そのシェアの大半を占める米国化学メーカー「3M(スリーエム)」製のマスクに絡む「詐欺」が横行。訴訟が相次いでいるのだ。

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 N95マスクとは、「米国労働安全衛生研究所」が定めた空気感染リスクの低減基準をクリアしたマスクのこと。医療従事者にとっては頼みの綱である。

 マスクビジネスを手掛ける人物によると、「3Mマスクの正規品を仕入れるルートは通常、3Mから正規代理店、卸売業者を経て、エンドユーザーという流れ。単価は正規代理店の段階で1.8ドル(198円)、卸売業者で2.2ドル(242円)というのが国際的な相場」

 だが日本ではその倍以上の値段が続いた。「一儲けを目論む“マスクブローカー”という新たな職種が介在し、エンドユーザーの足元を見て、高値を吹っ掛けるようになったからです」

本物だと疑わず…

 ハナから3Mとのパイプのないブローカーがデマカセの取引を持ちかけるケースが頻発するなか、詐欺的行為とは無縁に見える人物も“加害者”になっている。

 被害を訴えるのは、輸入販売会社を営む在日マレーシア人の社長。「日赤医療センター消化器内科の部長をかつて務め、現在、東京・神宮前でクリニックを経営する院長らを相手取り、契約不履行で、3億1460万円の損害賠償請求訴訟を起こしました」

 さる経営コンサルタント経由でそのクリニックの事務局長補佐と知り合い、昨夏、単価520円の3Mマスク50万枚を2億6000万円で買い取る契約を締結。クリニックが3Mと交わした、3M社員のサイン入りの「オーダー注文書」もある。だが、マスクは届かない。

 売買契約書上の“売主”である院長当人に説明を求めると、“すべて事務局長補佐に任せている”と素知らぬ顔。「3Mの日本法人である“3Mジャパン”に連絡し、オーダー注文書や納品遅れの理由が記された書面の真贋を確認した。すると、すべてが偽造との回答を得たのです」(同)

 3Mマスクは完全に売り手優位で、前払いが原則。だが商品が届かなかったり、届いても偽物だったりで、キャッシュを騙し取られるわけだ。商社をはじめ何社もの企業が引っ掛かったという。一説には、その「詐欺被害」は100億円の大台に乗ると言われている。

週刊新潮」2021年4月22日号「MONEY」欄の有料版では、詐欺の手口と被害者の証言を詳報する。

週刊新潮 2021年4月22日号掲載

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