おちょやん出演で注目される「小西はる」 3年前の騒動でプチブレイクの過去

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 NHKの朝ドラ「おちょやん」(毎週月~土・08:00~)がついに最終章に突入した。だが、クライマックスを前に大きな事件が勃発することに。杉咲花演じる千代の夫・天海一平(成田凌)が劇団員の朝比奈灯子と不倫関係に陥ったのである。さらにこの灯子が子供まで身ごもってしまったのだ。

 この事件をきっかけに千代と一平は離婚するが、朝比奈灯子役を演じたのが小西はるだ。黒髪ストレートのロングで純和風なルックスが印象的な彼女は大阪府出身で、2000年10月16日生まれのまだ二十歳の女優である。実は彼女、大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」にも出演しているのだ。主人公・金栗四三(中村勘九郎)が赴任する高等女学校の生徒役(役名なし)を演じた。

 もちろん民放でも活躍。ドラマでは「あと3回、君に会える」、「こんな未来は聞いてない!!」(ともにフジテレビ系)や「今野敏サスペンス警視庁強行犯係樋口顕」(テレビ東京系)などに、バラエティでは「痛快TVスカッとジャパン」(フジテレビ系)などに出演歴がある。

 特に印象的だったのが19年に放送されたドラマ「G線上のあなたと私」(TBS系)だ。演じたのは中川大志扮する大学生・加瀬理人の同級生で、バイト仲間でもある清水結愛役。明るく活発で、ただひたすら理人に恋する女の子だったため、ヒロインの也映子(波瑠)を不安に陥れる存在となってしまっていた。だが、まさにドラマをかき回す好演ぶりであった。さらに20年に制作されたテレワークドラマ「私は誰ですか?~花子に何が起こったか~」にも出演。演じたのは遠山夏希という素行のあまり良くないキャラクターで、先の結愛とは真逆の役を見事に演じていたのである。

“東播磨ちゃん”でブレイク

 実は過去に彼女はプチブレイクしたことがある。18年に兵庫県東播磨県民局のウェブCMに出演した“東播磨ちゃん”といえば、お分かりになる人もいるのではなかろうか。兵庫県南部に位置する東播磨地域は近隣の神戸や姫路と比べると、観光名所としては今イチ人気がない。そこで、東播磨地区の観光スポットや特産品を紹介する、全5話からなる新感覚のドラマCMが制作された。彼女が演じた主人公の東播磨ちゃんはアイドルグループ“HYOGO”のメンバーでセンターを任されている。にも関わらず、キラキラしている神戸ちゃんや姫路ちゃんに挟まれて、少し引っ込みがちだった。そんな東播磨ちゃんの苦悩と葛藤、努力と奮闘が描かれた。

 兵庫県のマイナー地域を“売れないアイドル”として擬人化したワケである。第2話の“弱さ編”では神戸北野異人館街や姫路城といった“売り”を堂々とアピールする神戸ちゃんや姫路ちゃんに対し、東播磨ちゃんが持ち出す“明石焼き”や“かつめし”がレッスントレーナーから“弱い!”と一喝されるシーンがあるなど、地方CMとしてはあえて自虐的な部分を前面に押し出した。

 この一連のCMの中で小西は少し地味ではあるが、みんなに愛されようとひたむきに頑張る姿をときには哀しく、ときにはユーモラスに演じたのだ。配信直後に構成自治体のひとつである明石市の市長が“自虐ネタ”に異議を唱え、一度は配信が停止されてしまったものの、騒動となったことでかえって話題を集めたことも大きかった。停止から約2週間後に配信が再開されると、さらに注目度が増したのである。

 彼女はまだ映像作品への出演数はそれほど多くはないが、確かな演技力を兼ね備えている点は注目すべきだろう。この東播磨ちゃんのCMも自治体PR動画としては異例の3ヵ月という長期に亘るオーディションを実施。その中から選ばれたのだから驚かされる。しかも今年でまだ芸歴は5年ほどなのに、である。もっとも彼女、舞台経験は豊富だ。所属事務所の女優志望のタレントにより結成された劇団「少女劇団いとをかし」の公演をはじめ、すでに10本以上の舞台を踏んでいるのだ。特に「少女劇団いとをかし」は演劇の要素とライブの要素を詰め込むことで少女たちを一人前のパフォーマーとして成長させる狙いがあったため、かなり鍛えられたのではないだろうか。だとすればあの演技力も納得である。

 特に「おちょやん」で注目したいのが、第20週の「何でうちやあれへんの?」での第98話。灯子の妊娠を知った一平が彼女のもとを訪れたシーンだ。灯子は「お二人の知らんところで私が一人で育てます。せやさかい生ませてください」と一平に懇願する。一平は身重の彼女を心配するのだが、灯子は「せやったらお金をもらえますか。この子を産んで私が働けるようになるまで、ちょっとの間生きていけるだけのお金をください」。

 そして一瞬の沈黙のあと、さらにこう言い放ち、軽く微笑んだのである。「愛情はいりませんから」。

 このシーンのセリフと表情には、まさに一人の母として生まれてくる子を守って生きていかなくてはいけない……という決意と覚悟が感じられた。ポイントは「愛情はいりませんから」と言う前の“間”である。この間があったからこそ、より強く自分に言い聞かせているという印象を観るものに与えることができたのである。

 今年は「おちょやん」のほか、「裕さんの女房」(NHKBSプレミアム)と「出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年のこと」(WOWOWプライム)にも出演。現在放送中の後者では瀧本美織演じる主人公・菜々子が店長を務める書店のアルバイト店員の後藤役を好演している。

 また、映画も「シガレット」と「ライアー×ライアー」に出演。まさに飛躍の年となりそうな気配が漂っている。彼女は“東播磨ちゃん騒動”で注目を浴びた直後のインタビューで「朝ドラヒロインが目標」と語っていた。今回はヒロインではなかったが、ここ数年、朝ドラヒロインに選ばれた女優の顔触れを思い出してほしい。土屋太凰、高畑光希、芳根京子、有村架純、杉咲花らは、まず先に脇役で出演し、話題となった面々なのである。今後のラインナップである「おかえりモネ」の清原果耶と「カムカムエヴリバディ」の川栄李奈、「ちむどんどん」の黒島結菜もしかりだ。

 近い将来、朝ドラヒロインに抜擢される可能性を大いに秘めている二十歳の新進女優・小西はるの成長をこれからも注目していきたい。

上杉純也

デイリー新潮取材班編集

2021年5月9日掲載

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