EXIT「りんたろー。」が語る「介護」と「世代間対立」

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親の介護の心構え

〈超高齢少子社会を迎えた日本において避けられない介護。どうやら、そのキーワードは「真面目になりすぎない」のようである。それは「親の介護」にも当てはまると言えそうだ。〉

 自分の親を介護施設に入れるのは悪いことだと考える人って、とりわけ真面目な日本人に多い気がします。でも、僕はこう思うんです。それは、自分自身に愛を向けられている人が少ないからじゃないかと。

 自分の親は自分で介護しなきゃいけない。そう考える人は、すごく周りに気を遣って、親も含めて周囲を愛している。でも、その分、もっと自分を愛してあげてほしいんです。

 自分の親なんだから自分の責任で面倒を見なきゃ、私が遊んでいる暇なんてない。真面目な人はそう考えがちですが、楽しい生活をして自分を愛せる時間がないと、絶対に親も愛せなくなってしまう。親の介護が重荷になって、大好きだった親を嫌いになる。それって本末転倒もいいところ。自分を愛せなければ、本当の意味で親も愛せないんじゃないですかね。

 こういう時代なんだし、自分だけで介護を抱え込まずに、任せるところは施設やヘルパーさんに任せる。もっともっと自分を愛して、人生を楽しんでいい。

 逆に介護されるほうも、されることを楽しむ。僕が介護の仕事をしていた時、トイレに連れていってもらうのが気まずくてお水を飲むのを我慢する女性がいたんですが、引け目を感じる必要なんてない。介護されることを楽しんでほしいと思います。

 お互いにやりたいことはやり、言いたいことも言う。だって、僕たちは支え合って生きているんですから。もうそういう時代が来ているんです。

〈だからこそ、彼の目にはコロナ禍で起きている世代間対立が不毛なものに映る。重症化を恐れる高齢者のせいで自粛を強いられていると不満を募らせる若者。一方、どうせ罹っても軽症だとタカをくくる若者が出歩くことで感染が広まっていると苛立つ高齢者。

 こうした世代間対立の象徴的事象と言えば、森喜朗元総理の「女性蔑視発言」による騒動であろう。無論、森発言は容認できるものではないが、他方で行き過ぎた「森バッシング」、すなわち「高齢者バッシング」に違和感を覚えた人も少なくなかったに違いない。若者世代をファンに持ち、高齢者世代の介護をしてきたりんたろー。は、どう感じていたのか。〉

 森さんの発言が悪いのは大前提です。でも、女性のことをちょっと軽く見る時代というものが確実にあって、そういう時代を生きてきた人がたくさんいる。

 当然、古い認識はアップデートしなければならないんだけど、ごめんなさいって謝った人をボコボコにするのはどうかなと。みんなで一緒になって古い感覚を改めていきましょうというのが目的のはずなのに、一体どうなっちゃってんの、目的は何なのって。

 この世代間問題も「お互い様」なんじゃないですかね。例えば飲み会。若者は上の世代の誘いがうざいと言う。確かにうざいかもしれない。でも、僕はちょっと違うと思うんです。お互い様だから。

 飲み会が楽しいと感じる世代がいれば、そうでない世代もいる。お互いに認め合って、交わるところは交わるし、交われないことも当然ある。それでいい。若い世代が上の世代の誘いをうざいと感じているとしたら、若い世代も上の世代に同じことをしていると言えます。拒否し合っているという意味ではお互い様なんで。

意識のし過ぎは逆効果

〈互いに排除し合わない世代間融和の重要性を語る彼の「原点」は、お祖母ちゃん子だったことにあるのかもしれない。〉

 80歳を過ぎた自分のお祖母ちゃんは、認知症で北海道の介護施設にいるんですけど、お互い携帯電話でしょっちゅう連絡を取り合って話をしています。

 全然面倒臭くないですね。だって、気になるじゃないですか。何してるのかなって。

「風呂入った?」

「明日入るから入ってない」

「ごはん食べた?」

「食べたよ」

「美味しかった?」

「今日は煮物が出て美味しかった」

 他愛もない会話ですが、ひとつ質問したら、自然と会話ってどんどん広がっていく。こないだも、僕が送った吉本グッズのクッキーを喜んでくれて、

「美味しかった。施設の職員さんと分けたよ」

 と。それ以来、いろんなクッキーを送っています。 お祖母ちゃんとよく電話をするのって、そんなに珍しいことですか?

 お祖母ちゃんと何を喋ろうかなんて考えちゃうと、逆にダメ。介護の仕事もそうですが、苦手意識を持つと相手に必ず伝わる。そんなこと気にせずに、懐に飛び込んだほうがコミュニケーションは進むと思いますよ。気遣いとか遠慮とか、そういうのを意識し過ぎるのって逆効果じゃないですかね。

〈軋轢が生じやすく何かとストレスフルなコロナ禍。介護経験を持つりんたろー。の体験談には、このギスギス社会からのEXIT(出口)を見出すヒントが隠されているのかもしれない。

 最後に高齢者、若者問わず、「今の時代」を見つめ直す際の参考として「チャラ男」の言葉を今一度。〉

 敵はウイルスなんですから、誰かを責めても仕方ないじゃないですか。

 だからこそ、このコロナ禍では、お互いに相手の世代のことを思いやって、距離を取ったり、生活の場を別にしたりすることが必要なんだと思うんです。今、大事なのは「愛のある分断」じゃないっすかね。

りんたろー。
1986年生まれ、静岡県出身。吉本興業のタレント養成所、東京NSCの14期生。2017年、後輩の兼近大樹と「EXIT」を結成。お笑い第7世代を代表するコンビであり、「チャラ男だけどいい人」として若者を中心に絶大な人気を誇る。「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)などレギュラー番組多数。

週刊新潮 2021年4月22日号掲載

「『愛のある分断』とは!? EXIT『りんたろー。』が語る『介護』と『世代間対立』」より

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